1章「そして彼女は目を覚ます」
□2話
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「ところで、アデルはさっきどうやって空を飛んだの?なにかの魔術なの?」
カノンノがそう尋ねると、アデルは少し目を開いて首をかしげる。
彼女の目はもう金の光ではなく、再び黄色に戻っていた。
「まじゅつ…?」
「違うの?すごい魔術で空を飛んだのかと思ったんだけど…」
その時。
ザッザッザッザッツ…
と、背後から何かが近づいてくる音がした。
「何…もしかして、魔物!?」
カノンノが慌てて後ろをふりむくと、オタオタが2匹、アックスビークが1匹近づいてくるのが見えた。
「大変っ…!アデル、あなたはここにいて!」
アデルにむかってそう叫ぶと、大剣をとりだしカノンノは走り出す。
飛び上がって襲ってきたオタオタをまず横切りでなぎ払うと、素早いアックスビークに向かって大剣を振り下ろした。
しかし、剣はアックスビークの羽を少し削っただけで、アックスビークの体当たりを止めることはできなかった。
「きゃっ…!」
お腹に強い衝撃があり、尻もちをついてしまう。
そこに、もう一匹のオタオタが飛びかかってきた。体を転がしてその攻撃を避ける。
そして立ち上がって次の反撃にでようとして、
スパンッ…
目の前にいたオタオタを、アデルが剣で真っ二つにした瞬間を目撃した。
唖然としていると、アデルはその勢いのまま後ろを振り返り、空高く飛び上がったアックスピークに向かっていく。
「危ない、よけて!」
飛び上がったアックスビークから繰り出されるとび蹴りは強力だ。直撃してしまうと数メートルは吹っ飛ばされてしまう。
アデルはものすごい速さでアックスビークの後ろに回り込んだ。そして攻撃を空振りしたアックスビークが態勢を崩したところで剣を振り下ろす。
羽が飛び、周囲に少量の血が舞った。
だが、まだアックスビークは戦う意欲を失っていなかった。傷つけられたことへの怒りでさらに力が増し、アデルをそのくちばしでつつきだす。
助けなければ。
カノンノは魔術の詠唱を始めた。足元に魔法陣の光が現れ、緑色の光がカノンノを包む。
「アデル、離れて!」
カノンノがそう叫ぶと、アデルはさっとバックステップで距離をとった。
「轟け、ライトニング!!」
突如小さな黒い雲が現れ、そこから雷がアックスピークへと直撃する。
雷の光が消えた時と同時にアックスビークは跡形もなく消滅した。