‐Short Story‐

□君色。
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「ねぇ篤志、雷門から何処にもいかないよね」


最近噂になってきてる、南沢が雷門を出ていくとか、サッカーは内申の為にしてたとか。
兎に角篤志に雷門から出ていって欲しくなかった


「…どこで聞いた、そのこと」


「噂になってるよ、廊下で話してる人がちらほらいるの」


「そうか、それは本当の話。俺は雷門を出ていく」


「円堂監督が来たから?内申に響いちゃうから?」


「ああ、そうだ。革命なんて…面倒くさい、内申に響くだろ」


「…そっ、か」


噂は本当…なんだ、行かないで欲しい。何処にも行かないと約束して欲しい。
…ううん、した筈なのに、篤志…忘れちゃったのかな?


「どこに転校するの?」


「…教えないさ、付いてくんだろ」


「ついていかない、もう篤志は必要ないよ」


「嘘付け。行くなって顔してる」


本当はついてきたい、ずっと篤志の傍にいたい。頬に手を添えられて、顔を上げられた
夕日が私の顔を照らしてるから頬が赤いなんてわからないと思う。


私の方を向いている篤志の表情は悲痛な表情で今にも泣きそうな顔。
泣きたいのはこっちなのに、そんな顔されちゃったら泣けない。


「…ねぇ、辛そうな表情するなら行かないでよ。」


「それは無理だ、もう決まってる」


「じゃあなんで相談してくれなかったの?私達、付き合ってるんだよね?それなのに、なんで」


「止めるから。言ったら止めるだろ?だからだ。もう決まった話なんだ、取りやめには出来ない」


「…そうなんだ、ね。」


私の中で何かが崩れた。私に何も相談しない篤志の心の中がわからない、何を考えてるの?何がしたいの…


でも、もう決まっちゃったんだよね。それならさようならだ…


「それじゃあさよならだね。」


「ああ、ごめん…」


呆気なく終わってしまう、篤志が私の前から消える。居なくなってしまう、止めなきゃ。
でも動けない夕日と共に消えてしまう、頬からほんのりとした暖かさがなくなって…


「何も言えずに」「今まで」


「ごめん」「ありがとう」



ああ、終わっちゃった



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