連載

□『お詫びにデートしてよ』
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『………っん、』



いつの間に気を失ったのか、私はゆっくりと目を開けた。そこはどうやら保健室のようで薬のツンとした匂いが鼻についた。

つーか頭いてぇ!ズキズキなんてもんじゃねーよ、もうガツンガツン殴られてる感じだよ。



『こんちくしょう、誰だ私にボールをぶつけたやつは』

「すんません、俺っス」

『ういひゃあ!』



いきなり隣から声がしたと思ったらちっこい男の子が椅子に座っていた。ていうかいつからいたんだ。

その疑問を少年に聞いてみた。



「あんたが起きる前から」



あらま、なら声をかけてくれれば良かったのに。



『てか、君だれ?』

「越前リョーマ。あんたは?」

『柚原玲奈。ねぇ、越前くんが私にボール当てたの?』

「まぁ…あのキノコ頭のやつに当てようとしたらそいつが避けてあんたに当たった」



日吉くんに当てようとしてたのか君は。危ない子だなぁ。



「それより玲奈、頭大丈夫?」



いきなり名前呼びかよおい、一応年上なんですけど。まぁ心配してくれてるみたいだしよしとしよう。



『大丈夫、冷やしとけば治るよ』

「そっか」

「アーン、やっと起きたのか?」



ちょ、今越前くんで和んでたのに!



『怪我人にやっとってひどくないですか?』

「なにが怪我人だ。ボーっとしてるのが悪い」



うっ、確かにそうだけどさ!そんな責めないでよ!



「跡部はもうちょっと素直にならなあかんで。玲奈、これでも一応心配しとったんやで?」



景吾さんの後ろからひょっこり現れた侑士くんにそう言われ少し驚きながらも景吾さんを見れば、なんか睨まれた。

嘘だ、心配してたなんて嘘だ…!



「柚原さん、大丈夫ですか?」

『あ、全然大丈夫です』



手塚さんもいたみたいで、怪我の様子を心配してくれる。やっぱ手塚さん優しい!



「ねぇ、なんか食べたい物ある?」

『食べたい物?どしたの急に』

「別に、ただのお詫び」



そう言って素っ気なく顔を逸らす越前くん。

か、可愛い!なにこれ!あ、あれか?これが噂の“ツンデレ萌え”なのか!?

そんなことを考えていると越前くんから返事の催促がきた。



『んー、特に食べたい物とかないんだよなー』

「なんにもないの?」

『うん、だからさ』

「?」

『お詫びにデートしてよ』

「「「「!?」」」」



私のこの言葉に、その場にいた4人が固まった。え、私なんか変なこといった?



「待て、なんで越前とデートする必要がある」

『や、越前くん可愛いから』

「自分ほんまそればっかりやな」

『いいじゃんか。てことで次の日曜日、〇〇駅前に12時ね!』

「俺まだ行くって行ってないんだけど」

『え、来ないの…?』

「っ、行けばいいんだろ!//」



越前くんのその言葉に私は思わずガッツポーズ。視界の隅で手塚さんの顔が引きつっていたのは気にしない。



『それはそうと、みんな練習試合は大丈夫なんですか?』

「もう終わった」

『え?ちょ、今何時…っ』

「ちょうど4時過ぎたとこやな」



うっわー、私4時間も気失ってたの?マネージャーの仕事ドリンクしかやってない…。タオルも採点もあったのに、なにもできなかった。



「…すんません」



私の思いに気づいたのか、バツの悪そうな顔で謝ってくる越前くん。いい子だな。



『気にしないで、避けれなかった私も悪いし』

「でも、」

『デートしてくれるんでしょ?ならそれでチャラ』

「…あざっす」



なんだろう、なんか弟でもできたみたい。ジローちゃんとかも可愛いけど、あれはどっちかっていうとペットの部類にはいる。だから、なんか新鮮だな。



「玲奈も大丈夫そうやし、そろそろ帰ろか?」

「そうだな」

「ほな、またな」

『あ、待って!手塚さん、越前くん、ありがとう!』



そう言って2人のあとを追おうとしたとき、越前くんが私に何かを握らせた。



「俺のアドレス、連絡して」

『うん!』



こうして氷帝と青学の練習試合は幕をとじた。



(あー!玲奈ちゃん帰ってきたC!)
(ん?なに持ってんだ?)
(越前くんのアドレス)
(((はあ!?)))
(デートすることになりましたー)
(((はああ!?)))


 
 

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