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□愛したのは、
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ジリリリリ…ジリリリリ…

ザァァ、と雨が降り続く朝の空間に、目覚まし時計の音が鳴り響く。

ジリリリリ…ジリリリリ…

「…8時…か」

目覚まし時計を止める事なく小さくそう呟いた。

「…いつもは…来てる時間…だよな…」

ゆっくりと目覚まし時計を止めると、覚醒は起き上がった。

「…別に…待ってなんか…」

自分に言った後、歯を食い縛りドアに向かった。

バンッ

―…いない

窓も開けた。

ガラガラッ

―…ここにも

布団もめくった。

バサッ

――…。

覚醒の目からはまた、透明な涙が溢れだした。

「っ…馬鹿だろ…
今更この気持ちに気づくなんて…!」

―――――――

あいつが引っ越してきたのは去年の3月。
やたらと真面目で…そして優しいあいつは俺に引っ越しの挨拶をしにきた。

コンコンッ

『こんにちは!引っ越してきたスプレンディドだが…入るぞ?』

ガチャ…

その時俺は…



血に、まみれていた。

みんなが俺の家に遊びに来ている時、ガラスが割れ『俺』は覚醒化してしまった。

友達は全員醜い姿で死んでいる。

そんな状況で、あいつは俺の家にのうのうと入ってきたのだ。

そして、血まみれの俺を見て驚きもせず笑顔でこう言った。

『君に会えて嬉しいよ。よろしく、フリッピー君』


俺の中の何かが崩れた。
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