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□愛したのは、
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―ジリリリリ…

気持ちの良い朝の空間に響き渡る目覚まし時計の暑苦しい音。

バンッ―…

イライラしながら目覚まし時計を叩き音を止めたのは…

「ったく…誰が目覚ましなんか設定したんだよ…」


覚醒化したフリッピーだった。
目覚まし時計の音で朝っぱらから呼ばれた覚醒は、イライラしながらもむくりと起き上がった。

その瞬間、


ドォーン、ガラガラ…


屋根から家の破片と共に青い男が落ちてきた。

「やぁ、フリッピーく…いや、覚醒君!おはよう!」

にこりと微笑み何事もなかったかのようにしているこの男はスプレンディド。

「いい朝だね!て、どうしてそんなに怒った顔をしているんだi」

台詞を言う前にディドの頬に拳が飛んだ。

「てめぇはなんで屋根から落ちてくんだよ!お前がいる時点で『いい朝』は終わってるんだっつーの!」

家の屋根が無くなった事に怒っているのか
いい朝が終わってしまった事に怒っているのかわからない覚醒は怒鳴り続ける。

「つーかてめぇはなんで毎日毎日俺様の家に来んだよ!なんか用事あんのか!?」

「用事?そんなものないさ。僕は君が好きだから会いにきているのs」

「わかったよ。わかったから帰れ」

ディドが台詞を言い終わる前に覚醒がさえぎった。

(帰れって言っても駄々こねて帰らないのがオチなんだよなぁ)

覚醒は呆れたようにため息をついた。

するとディドはあっさりと

「あぁ、わかったよ。」


と言い、ドアに向かった。

いつもではあり得ない言葉に、覚醒は耳を疑った。

ガチャ―…

ディドがドアを開けた瞬間、覚醒は事実だと知った。

「え、」

「え?」

覚醒は驚きのあまりにこう言った

「それ、ドアだぜ?」

「…知っているよ?」

当たり前だろう、とディドは付け足した。

「…帰るのか?」

「…君がそう言っただろう?」

覚醒はぐっ、と拳を握りしめた。

「お前、本当に俺が好きなのかよ?」

ディドの動きが一瞬止まった後、ディドは振りかえりこう言った。

「好きだよ」

ディドの瞳は覚醒しか見ていなかった。
その瞳に、覚醒は何も言えなかった。

「…じゃあ」

ディドは簡単な挨拶を残し家を出ていった。

バタン…

ドアが閉まる音と共に覚醒は壁に寄りかかるように膝から崩れ落ちた。

「なんでこんな…胸が痛いんだよ…」

ポタッ…

「意味わかんねぇよ…っ」

ポタポタッ

「ちくしょうっ…!」

トンッ

力無く壁を殴った覚醒の目からは

透明な涙が止まらなく落ちていた。
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