krk 短編集

□鼻水
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「頭いた…」


昨日の夜寒気がするなぁと思っていたら案の定これだ。




史上最悪ってくらいの気分で朝を迎えた。
(本当は迎えたくないのだけど。)



家族はみんな学校や仕事に家を出てしまった。




そうするともう気分の悪さと退屈しかなくなってしまう。




「はぁ、」






持て余した時間を何とかしようと食べていない朝ごはんを思い出し、リビングへ向かった。






ちちちちっ



という音と共に、火がつく。




お腹はすいているものの食べ物を前にするとどうしても気持ち悪くなってしまうのだ。






「はぁ」




本日何度目かわからないため息をついた。





それならば…と
トイレに入り、この気分の悪さの元凶をすべて取り除いてしまおうと試みる。


しかし、それさえもできなかった。




なんなんだこの体は、と自分が16年連れ添ってきたものに悪態をついてみる。






することが完全になくなってしまった。


とりあえず吐き気止めを飲んでどさっとベッドへねっころがった。







冬の寒さのなか、布団のぬくもりは眠気を運んできてついに瞼を下ろす。




こんなことにならなきゃ今日も学校へ行っていたのかと


学校で勉強する自分を想像したがどうもしっくりこない。




それはいつも自分は勉強よりも居眠りに精を出しているからだろうか。




目を覚ますともう3時30分だった。





枕元の携帯を開くと



5件の着信と
7通のメールが来ていた。





着信2件と
メール1通は
お母さんからで


身体は大丈夫かという心配メールだった。




そして



1件の着信は黒子くんからで
もう1件は火神くんからだった。



メールは3通は黄瀬涼太…。


顔文字絵文字きらきらのメールがまぶしかったので削除した。


そして、黒子くんと火神くんからはメールも届いていた。






もう1通はリコ先輩with他先輩たち。



黒子くん火神くんとは同じクラスでそれなりに仲がいい。


というか、…いうなればマブダチ。




まずはお母さんに電話しようかしら、と通話ボタンを押そうとすると、



私の携帯が響きをあげた。




「もしもし。」



「あー美桜か?」


「火神くんじゃないか。」



「体調は、大丈夫か?」


「あらま、火神くんが私のことを心配してる。明日は雨?」


「なんだ元気そうじゃねぇかよ。」



黒子に変わる、と心地いいくらいの低い声から透明感のある声に変わったのに時間はかからなかった。




「黒子です。具合は大丈夫ですか?」


「ありがとう、大丈夫だよ。」



「今日はゆっくり休んでください。」



「うん。あ、これから部活だよね?」

「はい。そうですよ。」


「先輩達に、部活出れなくてすみませんって言っておいて。」



「…それは、自分で言ったらどうでしょうか?」



「え?」




黒子くんの声が聞こえなくなった。

と同時にたくさんのひとの声が聞こえてくる。





「先輩、部活出れなくてすみません。」


「今日はゆっくりやすんで、明日来いよ!」



「ていうか、美桜がいねぇとつまんねぇから早く治せよ。」




「ふふ、わかりました。」








「先輩もみんなも、本当に私のこと大好きですね。まぁ私もみんなのこと愛してますけど。」





熱をだすとこんなにも歯の浮くようなセリフが飛び出てしまうのだ。





「うるせぇ。」






ゆっくり眠れそうだ。

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