krk 短編集

□林檎
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好きだよ。
と言って好きだよって返ってくる。

それから、幸せっていうと
幸せって返ってくる。


そんなことを夢にまでみて、何度泣いただろう。



「青峰くん、おはよう。」

「あー、はよ。…つかお前顔赤ぇ。」

「え…え?」


慌てて頬を押さえてみるけどもう遅い。


隣の席の青峰くんは笑った。

片眉を下げる笑い方にどきどきと胸が高鳴る。


「今日は早いんだね。」


「さつきが朝練でろってうるせぇんだよ。」

「でも、出てないんだ。」

「面倒くせぇし、練習したらしただけ強くなっちまうだろ。」


そういってまた複雑に笑う。

くしゃくしゃに笑えばいいのに目は笑わない。


それが最初、少し怖かった。


だけど引き込まれていく。



どんどん…






どんどん。





何時の間にチャイムはなったのだろう。



教室にはたくさんの人があふれていた。



席につけって先生は怒って、私はゆっくりと息を吐いた。




窓側の席の一番後ろ。

私の席はあったかくてそのまま眠りに落ちてしまった。




夢の中では私は泣いて、
彼は笑って、

それから誰かと歩いて行ってしまう。


正夢になるのが怖くて、何も言えない私。



いつになってらこの涙は止まってくれるだろう。




気が付くともう教室には誰もいない。

「こんな時間まで寝てたんだ。」


午前授業なんてすぐ終わってしまう。


「…起きたんだ。」


「あおみね…くん?」


彼は笑って、

私は。



「え?おい…」

「ごめ、」


止まらない。

止まらない。




こんな気持ちはなんていうのだろうか。



「泣くなよ。」



あなたがもしも近くに居てくれるのなら私はあなたにすべてを捧げましょう。



「ごめんなさい…!」




叶わないことなのだけど。































誰かと歩く君の顔が優しすぎて、何も言えない。
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