krk 短編集

□その滴を受け止めて
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俺が好きな子には誰よりも大切な人がいる。


「大ちゃん!」



そい言ってほら、今日も。



「美桜っち、青峰っち。いちゃいちゃしないでくださいす〜」


「うるせぇな、黄瀬。お前なんかそこらじゅうに女いるだろ。」

「ちょっなんか俺がたらしみたいな言い方しないでくださいっす!!」


「あ?なんだよ、違うのか?」

「ひどっす!」



「まぁまぁ、涼太。早く彼女できるといいね!まぁ涼太ならすぐか。」


違うのに。
違うのになにもわかってない。





俺が好きなのは。




「…そうすね。」





曖昧な笑顔を見せるのは、気づいてほしいから。




「…?大ちゃん、帰ろう〜。」



俺はずるいからこんなことしかできない。




「おー、着替えてくっからまってろ。黄瀬、手ぇだすなよ。」


「わかってるっすよ。」




青峰っちに憧れた。
本当に憧れた。


彼は、俺のほしいものは全部もってる。




「どうして、青峰っちがすきなんすか?」
「え?そりゃあ…なんだかんだ言って優しいところとか。」


「優しい奴なんていっぱいいるっすよ?」



俺はずるいからこんなことしかできない。

俺は彼女を傷つけることしかできない。





「俺のほうが、優しくできるのに。」



「大ちゃんは、ほかの人と…違うの。大丈夫。涼太が優しいのなんてわかってる。」

そういって彼女はすごくすごく綺麗な弧を唇でつくって笑う。



「なんで、」

「涼太、わかってるから。笑って?」



俺を傷つけてくれないんすか?





俺だけがずるいみたいで。
俺だけが取り残されてるみたいで。



何もかも見透かされてたなんて。
とても恥ずかしいこと。




だけど。
それでも。







「好きなんす。俺は…美桜っちのことが。好き。どうしようもなく。」



「…涼太にはもっといい人がいる。私じゃなくもっと素敵な人がいるよ。」




伝えてしまったら、戻れないと知っていても。
零れ落ちる俺の想い。





「俺は…美桜っち以上も、それ以下も望まない。」



「涼太…ごめんね。大ちゃんのそばに居てあげれるのは私だけなの。」




「謝られると、余計みじめになる。」



「…涼太。」


「おい、いくぞ美桜。」

「大ちゃん…。ばいばい、涼太。」




俺のすべては君で。

青峰っちと君の姿を必死で追いかけてた。
だけど、君も青峰っちもそこにはいなくて。

たどり着いて、あぁ幻想なんだと初めて気づいた。
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