太陽は僕らに背を向ける

□揺れる想いと僕らの日常
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『ごめん。あ、征ちゃん!』


昊っちは赤司っちのところへ行ってしまった。

「あとは、サラダもつくらないと…っすね…。」


なんでもない。


なんて言おうとしたのかばかりが俺の頭を支配していた。

みんなとはスーパーを出たところで別れた。


帰路をたどっているときも、俺たちの間には一言も言葉か放たれることはなかった。




『…涼ちゃん、食べよっか。』



そのまま、ご飯を作っている間も。




「そっすね。」




2人で食べたハヤシライスは、あの時と同じ味がした。





おいしいねっていう昊っちの顔はあの時の顔と変わらなくて少し…



ほんの少しだけ安心した俺がいた。







「お風呂、先入ってくださいっす。」
『じゃあ、お言葉に甘えてお先に失礼します。』





気が付くともういつもの笑顔に戻っていた。




君も、俺も。





俺がお風呂から入ると、
昊っちはもうすでに準備を終えてうとうとしていた。



「ちゃんと髪乾かさないと風邪ひくっすよ。」



そういって昊っちをソファの上に座らせて髪をふく。





『ん、涼ちゃんおかえりなさい。』


少しの間めをしぱしぱさせて眠気を払おうとしていた目が俺をとらえる。




「ただいまっす。」



『涼ちゃん、今度が私がふいてあげるね。』




まだ眠そうな顔をして、昊っちが立ち上がる。



『交代。』


「わかったす。」




優しく優しく俺の髪をふく。


その小さな手を俺は守りたい。
いつまでも、ずっと。





『も、ねむい…』



ゆるゆると俺の隣に座って俺の肩に頭を置く。




『りょーちゃ、だっこ』
「おいで。」



眠くなると甘えが強くなる。
それはきっと過去が原因。
だから俺は夜はめいっぱい甘やかす。




とにかくベッドに連れて行き、すでに目を閉じている昊っちを下す。



「おやすみっす。」





『お願い涼ちゃん。私から…』





綺麗な寝顔が歪んだ。





「…昊…」



『離れないで…』

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