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□待ち人来たりて
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※「さんすくみ」と「おお振り」のダブルパロ小説『暗闇の中 見えたのは…』の続編になります。



 一年で一番忙しい時期に、親父がぎっくり腰になりやがった。

 オレ、泉孝介の家は代々神主の家系。町にひとつしかない神社(まあ他の町でもそんな二つも三つも神社はないだろうけど…京都・奈良は除く…)を一家で切り盛りしてるわけなんだけど、よりによって書き入れ時の大晦日夜に親父が動けなくなったわけで。

 お袋も神職の資格は持ってるし、おみくじやお守り売ったりするぶんには、それらしい格好さえしてりゃオレや兄貴でも構わないわけだから(そもそもこの時期の巫女なんてほとんどがバイトだ)、なんとかなるっちゃなるわけだけど。

 それでも、一年で一番忙しい正月三が日に、メインの神主が居ないんだから、残されたオレたちにかかる負担はハンパないわけで。


  【待ち人 来たりて 】


 元旦・二日の疲れもかなり溜まって来たのか、三日も昼頃になると、なんだか気分がどよ〜んと滅入って来ていた。ん〜、なんだろう、何か大事なことを忘れてるようなモヤモヤした気分もあるし、とにかくテンションが落ちてるんだよな。

 そんな感じで眉間にシワ寄せながらおみくじ売ってたオレの目の前に、よく見知った奴らが現れた。

「いっずみ〜! あっけおめ〜!」
「い、ずみく…あけまし、て、おめでと……」
「おぉ〜泉ぃ、また来ちった〜」

 思わず「はあぁ…」と溜め息つきながら、頭を抱えた。

「どした? 頭痛でもすんのか?」
「黙れ、頭痛のタネどもが! おまえら、元旦も来ただろうが。年始の挨拶は一回でいいっつの!」

 同じ高校で同じ野球部でクラスも同じ9組の田島&三橋のひよこコンビと、今は野球部じゃなくて応援団だが中学からの腐れ縁の浜田が、ヘラヘラ笑いながら立っていた。


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