Northern lights

□09
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「奪ったG≠すべて投入してきたのか!?」 
 予想はしていたとはいえ、ストライクに向かっている4機のMSの機影を確認し、シオンは息を呑んだ。
 ストライクとイージスが戦っている間にデュエルが割り込み、ビームライフルを放ちながらストライクに迫る。


『くっそー! なかなかの武装じゃないか! 取り付けない・・・』
『艦底部から仕掛けます。援護を!』
「やらせるか・・・っ!」
 シオンはストライクの位置を確認しながらも、アークエンジェルに取り付こうとするバスターとブリッツを牽制する。
 突如降り注いだ攻撃に、ディアッカは驚きの声をあげ、周りを見回した。
『っ!? 今のどこから・・・っ』
 ミラージュコロイドを展開させているアマテラスは、スラスターやライフルの熱源が感知されない限り、相手に見つかることは無いに等しい。
「・・・こんな戦い方はしたくないんだが・・・」
 不本意だと言わんばかりの表情でシオンが呟く。
 この機能は本来、偵察時に展開させることを目的として搭載されたものだ。姿を隠したまま相手を攻撃するなど卑怯以外の何物でもない。
 だが、アマテラスの姿を晒すことで自分の存在がザフトに知られるよりはマシだと考えを転換させる。いくら秘匿していた機体でも、彼らの力をもってすればアマテラスの情報を得ることは難しくないだろう。現にXシリーズの情報は漏洩し、こうして強奪までされたのだ。

『ディアッカ! もしかすると敵のMSかも知れません』
『はぁ? MSって』
『このブリッツと同じ機能を搭載しているのかも・・・』
 ニコルは計器を操作し、熱源サーチを開始した。味方であるアークエンジェルからもあれだけの爆雷が打ち出されている現状で、じっと一ヶ所に留まっているなどあり得ない。
『・・・見つけた!』
 素早く標準を合わせると、ニコルはレーザーライフルをターゲットへと放った。
「ちっ、意外と早かったな」
 向かってくるライフルの光向かってシオンはシールドを掲げる。“ヤタノカガミ”のコーティングを施されたシールドは簡単にそれを反射させた。
『・・・跳ね返した?!』
 敵に向けて放った攻撃は、シールドで防御されたというよりも、明らかに自分へ向かって跳ね返って来たように思えた。

(反射させて自分が無事でも味方に当たれば意味がない。確実にに敵機を捕捉してそいつに向けて反射させなければ・・・)
 動揺するニコルとは対照的に、シオンは反射されたエネルギーの軌道を冷静に確認していた。


 バスターとブリッツを相手にアークエンジェルは回避行動を取りながらも防戦していた。爆雷が撃ち出され、イーゲルシュテルンが、対空防御ミサイルが一斉に発射される。
 どれ程の装備を持っていても、大きな戦艦が最新MSの相手をするには無理がある。それを補うようにアマテラスが迎撃する。

 見えない敵に、ディアッカとニコルは恐怖にも似た感情に支配され始めていた。アークエンジェルから撃ち出されるミサイルを撃墜しながら、見えない敵からの攻撃もかわす。
 言い知れぬ恐怖と疲労が二人に圧し掛かる。ただ時間だけが流れた。


「マズイな・・・」
 流れる時間に、シオンは若干焦りの色を見せ始める。
 ブリッツに搭載されるよりも前に搭載したミラージュコロイド機能。完全とはいえないそのシステムの稼働時間には限界があった。当然、ブリッツとは比べようも無いくらい短時間の稼動。
 漆黒の宇宙の中、ミサイルやビームの光とは明らかに質の違う光が徐々にその姿を現した。
『っ?! おいっ、何だあれ・・・MS?!』
 突如現れた機影に、ニコルとディアッカは急いでデータ照合を始める。
『アンノウン・・・?敵戦力はストライク1機だったはずです。一体・・・うわっっ!』
 動きが一瞬止まった隙を見逃さず、シオンはブリッツ、次いでバスターへとライフルを連射させると、追い討ちをかけるように、背部パックにマウントされている高エネルギービーム砲を発射する。
 ライフルとは比べ物にならないエネルギー波がブリッツとバスターを襲った。
『っ・・・なんて攻撃だ。大丈夫か! ニコル!・・・っくそ!』
『少し油断しました。ディアッカも大丈夫ですか?!』
『ああ・・・情報になくても、向かってくるなら敵だ』
 目の前の金色のMSを睨み付け、ディアッカは操縦桿を握る手に力を込めた。
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