Northern lights
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C.E.71、1月
<新たに届いた情報によりますと、ザフトは先週末、華南宇宙港の手前6キロの地点まで届き・・・>
ディスプレイに開いた別窓中でアナウンサーが深刻な表情でニュースを読み上げていた。
シオンはモルゲンレーテで手にした情報を暗号化してウズミに送るため一心不乱にキーボードを叩く。
最後にエンターキィを押すと情報がオーブへと送られた。
「これでここでの俺の仕事は終わりだな。後はどうするか・・・ザフトがこのままヘリオポリスを放っておくとは思えない。俺が指揮官なら・・・確実にザフトはヘリオポリスにやってくる。まったく・・・民間企業ゆえの強欲が出た結果がこれ、か。中立たるオーブが極秘裏に連合のためにMSを造った。それだけでもやっかいなのにもう一つ―――」
シオンはモルゲンレーテのメインコンピューターにハッキングして手に入れた資料に目を細めた。
―――強襲機動特装艦アークエンジェル=\――
(こんなものまで造るなんて何を考えてる!)
苛立ちを隠せずに机を叩く。
大天使の名を冠されたこの戦艦は他のXシリーズ以上に厳重に隠されており、ザフト側もこの戦艦の存在までは気づいてはいないだろうとシオンは推測した。
だからこそ余計に腹が立つ。Xシリーズだけでも頭が痛いのにこの上戦艦まで建造していたとなると、プラントに対してオーブは言い訳ができなくなるだろう。
いや、ウズミの性格からして最初から言い訳などせずに全責任を負う形で引責辞任しそうだが。
「させるか。あの方はオーブに必要な方だ。さて、どうしたものか・・・」
シオンは思考の海に潜った。だから気づくのが遅れたのだ。管制区のアラートに―――
シオンがヘリオポリスに来て、まず最初にしたことはヘリオポリス内のメインコンピューターにアクセスして官制区の情報を自分のコンピューターにダウンロードすることだった。
シオン・フィーリアには2種類のIDが存在する。
1つはオーブ民間人としてのID。
もう一つは影から獅子の国を護る、闇の獅子としてのID。
その影の存在は公になってはいない。その存在を知るのは、オーブ五大氏族と軍内の一佐以上の階級の人間のみ。
闇の獅子とは非常時にはオーブ代表の持つ全権限を独断で行使することも認められている。文字通りもう一人のオーブ代表なのだ。
だが、その存在は決して表に出ることはなかった。今までは。
「・・・!?」
工場区から聞こえてくる爆発音でシオンはパッと目を開いた。
コンピューターに向き直り、すさまじい速さでキーボードーを叩いていく。
「くそっ!やっぱり来たか!・・・だが、Xシリーズだけは!!」
ディスプレイ内に映し出された光景は爆風に吹き飛ばされる人々と誘爆し、炎上する施設。そしてMSの攻撃で崩れ落ちるモルゲンレーテだった。
シオンは手早くデーターを移し替えると万が一のことを考え、コンピューターを初期化して研究室を走り去った。