兄さん誕生日その2
□再生
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知らない人が出たこと。電伝虫からは先程にはなかったツーツーという音が繰り返し響いていること。一味はすっかり不安にかられていた。
「なんだよ、今の誰だ」
「今電伝虫は、出ることを拒否してるみたいね」
「保護してるって…やっぱり何かあったのよ」
「でも、ウソかも…」
「サンジから連絡あったって!?」
船長達が慌てた様子で森から戻ってきた。考古学者が説明する。
「出たのはコックさんじゃなくて、知らない人よ。しかも切れてしまったわ。ゾロ、ルフィ、気配を辿れる?」
「わかった」
二人は瞳をそっと閉じて、沈黙した。一味の何人かは首を傾げる。
「……!」
すると、目を開けた彼等は安堵の表情を浮かべた。
「あいつの気配が戻ってるな」
「え…なんでわかるんだ」
「…うん、サンジだっ!」
「ルフィまで!?」
「一体なんなんだ?」
「見聞色の覇気よ」
考古学者が安堵したように説明する。見聞色の覇気は戦闘時には相手の動きを予測することが出来るが、同時に鍛えれば島に何人の人が居るか、それぞれが何をしようとしているかが感知出来る能力である、と。
「うん。よくわからねぇけど知らねぇ誰かと一緒にいて、寝てるみてぇだ。迎えに行かねぇと」
「お、おう…」
安堵していいのかしてはいけないのかわからない様子の狙撃手が頷きで返した。そこで考古学者が航海士に提案する。
「じゃあ2時間待ってもう一度かけてから船を出ましょうか。ルフィやゾロ、電話の様子からして大丈夫そうだし」
「そうね。念のために要求に従っておきましょう。いいわね、ルフィ」
「…わかった」
船長が心配そうに頷けば、船大工がそのタイミングをはかったように彼らに呼び掛ける。
「お前ら、そっちもそうだが、こいつ、どうするんだ」
「こいつ…?」
剣士と船長と音楽家は首を傾げ、残りの一味はため息混じりにそちらを見遣る。キッチンのソファーには、気絶していて風采のあがらない男が眠っていた。
―――
(気配の)再生。
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