兄さん誕生日その2
□嘘
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サンジが敵の毒を浴びちゃった。でも、みんながうるさいから、昼寝ってことにしとけって言われて。夕飯までには確かに毒は消えるけど、辛さや怠さは残るんだぞって言っても聞かなくて。辛そうに息吐きながら寝てるんだ。
おやつは、冷蔵庫にプリンがあるから。ロビンかナミに出してもらう。酒はアクアリウムバー。そう言えば、サンジの手は必要ないって。頼むって言われたけど、みんなにウソつくって、やだなぁ。
「チョッパー!!サンジ知らねぇか?」
キッチンの椅子に座ってカルテ書いてたら、ルフィとウソップが来ちゃったんだ。おれは顔でばれるから、頑張ってばれないようにいつもの顔したんだ。
「サ、サンジなら医療室で昼寝してるぞ。どうしたんだ?」
「そうかぁ。いやさ、おやつ頼もうと思ってよー」
「おやつならナミかロビンに頼んで出して貰おうよ。サンジはもう少し、寝かせておいてあげ…」
「チョッパー」
ルフィの顔が、いきなり近くにあって、おれはびっくりしちゃったんだ。ルフィはじっとおれの肩掴んで、ちょっと、怖かった。
「ウソ、ついてるだろ」
「え」
「な、なにがだ、ルフィ?」
ルフィがおれの目見て真剣に言うから、ウソップもびっくりしちゃったんだ。
「サンジさ、ホントはしんどいんじゃねぇのか」
「な、なんで、わか…あっ」
口を塞いだんだけど、遅かった。ウソップが心配そうな顔付きになって、ルフィはまだ真剣な顔のままなんだ。
「チョッパーは優しいからな。ごまかしたって、心配そうな顔出てるんだ」
「……!」
ルフィには、なんでもわかっちゃうのかな。おれ、そんな顔、出さないようにしてたのに。
「それでも、ダメだぞ。これはついちゃダメなウソなんだ。サンジはしんどくなったら、一人で我慢しちまうから、おれ達に言わなきゃダメだ。サンジみたいじゃねぇけど、ゾロも時々やるし、ナミもやるからな」
ルフィは、サンジのことも、みんなのこともわかってるんだ。おれ達の、せんちょうだから。だから、ウソなんて、通じないんだ。
「わかったか?」
「うん…ごめんなさい」
ちゃんと謝ったら、ルフィはにっこり笑って許してくれた。
「なら、サンジんとこいこうぜ。無理すんな、って言いに」
「うん!」
ルフィと慌ててついてきたウソップと一緒に医療室に入ったら、やっぱりか、なんて目でサンジが見てきたんだ。でも、辛そうでも怒ってないのがわかって。サンジもこうなるの、わかってたみたいだ。
それで、ルフィの軽いお説教がすんだ後、今日は休めって釘を刺されたサンジとおれが残って。
「ウソつくのしんどいぞ、サンジ」
「…悪かったな」
サンジはおれにも謝ってくれて。
「サンジ、もうウソついちゃダメだぞ」
「…普段はついてねぇって」
「ダーメーだーぞー」
「…無意識なんだって」
「えっ」
無意識で、なんでウソなんかつけるんだ。
「勝手に身体や口が、動くんだよ。あることだけは」
あることが何なのかはわかるぞっ。サンジはみんなに迷惑かけるのイヤだし、みんながあぶなくなるのイヤだってことなんだ。
でも、無意識だったら、どうやって止めるんだ?
「…あいつが、止めるか、気合いだと」
サンジは、苦笑を漏らしながら、扉の方を指差した。多分あっちにはルフィがいるってわかったから。おれ、嬉しくなったんだ。
「ルフィは、すごいんだなっ」
「すごくなきゃ、ついて来ないだろ」
普段は違うけど、こういうウソを見抜いちゃうルフィは、やっぱりすごいんだ。
「あーあ、休みもらったし、もう一眠りするか」
「うん、そうしろ」
そう言ってサンジはすぐ寝ちゃったけど、おれはしばらく、嬉しいままだった。
―――
嘘。