兄さん誕生日その1

□意志
1ページ/1ページ



あいつは、人の意志を読み取る奴なんじゃねぇかと、時々思う。


おれの時は、生きたい、死ぬつもりはねぇ、大剣豪になりたいという意志を汲み取り、おれを仲間に引き入れた。


ナミん時は、助けて欲しいって意志を汲み取っていたのは目に見えていた。だから、あぁ叫んだんだろう。


ウソップの時は、やはり村を助けてぇって意志か。ウソップはわりと素直だったな、だからこそ、あれだけ素直に仲間に引き込めたんだろう。


……で、残るはお前だ。
どうしてあいつは、お前のどの意志を汲んで仲間に引き込んだ。別に、お前が仲間になることに関して悪いってわけじゃねぇ。言いたくねぇなら、構わねぇ。だが、おれが、興味があるだけだ。


――――


晩酌に誘った理由、これなのか。単に普通につまみ作って欲しかっただけ?けっ、仕方ねぇマリモだよ、まったく。まぁ、話してやるよ。軽く酒が回っていい気分だし。想像だけ、だけどな。


多分あいつは、おれの自分への意志を、汲み取って、解放したんじゃないかと思うね。難しい話、上塗りの意志ってところだ。


おれは、ジジイに恩を返さなきゃ、あいつらのために船を守らなきゃって他人のための意志ばっか…使い方があってるか、イマイチ自信はねぇが。とにかくそんなんばっかで、自分のための意志を隠してたんだよな。…笑うな、バカにしてねぇか。…ならいいけどよ。


とにかく、そういうことだと、おれは思ってる。納得したか?


―――――


「あぁ」


「まったく、回りくどいんだよ。てめぇは」


かりかりのフライドパスタとこりこり軟骨のから揚げをお酒のあてにしながら、二人はメリー号の甲板で晩酌する。


「これから仲間になるかもしれねぇ奴にも、これ聞くのか」


「…おれが立ち会ってねぇ時は」


「信用できねぇからか?」


「…勝手に決め付けるな」


剣士は酒を少し煽って、


「中ぶらりのまま付き合うのは、落ち着かねぇだろう」


料理人は一瞬きょとんとしたが、少し吹き出した。


「…堅物」


「あァ!?」


仲良くなれるのは確実だから、話して、互いをさらに知りたい。それだけなのに何故そうまでも堅苦しく言うのか。
料理人はくつくつと笑い、剣士がむすっとした顔で酒を煽る。すると響いた扉の音。彼等がそちらを見遣れば、寝ぼけ眼を覚ました膨れっ面があって。


「あー!!なにゾロとサンジで宴してんだ!!ずりぃぞっ」


「ふぁ、なにぃ!?おれも混ぜろォ!!」


「あら、私を差し置いてひどいわね。なぁに話してたのかしら」


「別に何も…」


「サンジー!!おれ達にもうまいもんよこせぇ!!」


「よこせぇ!!」


「引っ張るなァ!!」


こうして今日は、東の海で五人。
強い意志を持った仲間が、海を行く。


――――
意志。
ワンピのキーワードなだけに悩みましたが、普通の意味でいってみました。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ