兄さん誕生日その1

□炎
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「サンジー」


「んー?」


再会した後の二人船番の時。暇してるルフィがおれを呼んだ。おれは、出来上がったばかりのおやつ、ラズベリージャムの焼きたてビスケットを持って、甲板に向かった。


「すっげぇぞ、空が燃えてる!」


ここの島は不思議なもんで、…まぁ、不思議っつー表現が正しいかわかんねぇが、とにかく、上空が燃えたり、燃えなかったりしてんだ。原理なんかわかんねぇよ。そりゃ、


「新世界だからな」


「ちぇー、おれも冒険行きたかったなぁ」


「我慢しろ、たまには」


ルフィはようやくおやつに気がついて、クッキーを食べたそうに見つめた。顎で促してやると嬉しそうにいただきますと呟いたが、クッキーを摘んで、炎を見つめたっきり、食おうとしねぇんだ。


「…どした、気に入らねぇか」


「違うぞっ。でもな、今日にぴったりの空だって、思ったんだっ」


もしかして、と思った。そういえば、あの事件が起こったの、二年前の今日じゃねぇか。


「……酒持ってくるか?」


「うん、頼む」


「一人になるか?」


「いやだ!気ィ使いすぎは叱られるぞ、サンジっ」


「…へいへい」


もーちょい早く気づいてりゃ、何かしら工夫はしたんだがな。でもこいつらは命日を迎える時にはわりと一人でこっそりやるんだ。だから、こんなパターンめったねぇわけで。


クッキーにゃあわねぇかもだが、色はぴったり炎みてぇな、少し緩めのレッドアイを大急ぎで作ってやって、あいつの前とおれの前に置いてやる。ルフィがニィっと笑っておれを見て礼を言って、カクテルに手を伸ばした。


「月日ってもんは、あんがいあっという間だな」


炎と同じ色のクッキーを肴に、同じ色のカクテルを飲む。ルフィも頷きながら、カクテルを一口。


「なー、サンジ」


「ん」


カクテルを啜りながら、いつもの口調でルフィは言う。


「エースの話、していいか?」


「…お前の自由だ。話すんなら、聞いてやるよ」


そう返したら、奴の顔はぱぁっと輝いて、おれの背中をばしばし。い、痛ェっての。


「やっぱいいやつだな、サンジっ!おれの仲間はみぃんないいやつだっ!」


「…わかったから、早く話せって」


「おうっ」


そう言って奴は、あいつの兄貴を思い出す炎の色を見ながら、話を始めた。


―――
炎。命に続きます。
 

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