兄さん誕生日その1

□攻守
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「ぎゃあああああああ!!!」


静かなサニー号の甲板に悲鳴が轟いて、一つ海の音がした。マッチの擦る音と共に、格好つけるような息の音。白い煙が輪になって吹き出した。


「奇襲なんてきかねぇって。なぁ?」


「おおおおおおおうよ」


船番を任された料理人とその背に隠れる震える狙撃手。目の前には20人程の刀やら銃を持った男達が怖じけづく様子もなく笑う。


「その割には後ろの奴が震えてるじゃねぇか」


「お荷物持って大変だなァ、兄ちゃん」


「………!」


狙撃手が少し顔を青くしたが、ぽかっと一撃入れられる。見上げれば、料理人には敵を嘲るような表情が浮かんで居て。


「はっ。こいつをバカにすると、血ィみんぞ」


「何ィ」


料理人が、アイコンタクトをとった。狙撃手はその意図がわかり、震えながらかばんを開けて、静かに何かを取り出した。敵が警戒して、銃を構えたが。


「遅ェよ」


料理人がニィと笑うと同時に、強くそれをたたき付ける。強烈な破裂音と共に、煙が吹き出した。敵達はごほごほと咳込み始める。


「小癪な…げふっ!?」


「何が、ぎゃあ!!」


視界が悪い中で、鈍い骨の音と打撃音が響く。気づけば背に素早く迫られ攻撃され、海に落ちるを繰り返す。


「やっと、出れたぞ…くそが」


「あぁ、煙かった…!」


「運がいいな、おれ達…」


敵の三人が、銃を持ったまま煙から這い出してきた。じいっと目を懲らし、少し晴れた煙を見遣れば、料理人がゴーグルをして、両手をついての逆蹴りで片付けているのが見えた。男達は顔を見合わせ、ニヤリと笑う。


「調子に乗るなよ、海賊ゥ…」


「後悔させて」


「売ってやるゥ…」


かちゃ、と静かに銃を構え、仲間に当たらないように彼に銃口を向ける。煙が晴れていく間、残り彼ら三人になっていることに気づいたが、仕留めれば関係ないとばかりに。静かに引き金に、指が伸びる。


「ぎゃ」


「い」


「て!!」


だがそれは、手から即座にたたき落とされた。どこからともなく飛んできた三連の鉛弾。男達は辺りを睨んだが、さらに追撃。顔面に3つの弾を浴び、呻き出す。


「ぎゃぁぁぁ!!!熱ィ!!」


「いでえええ!!!」


「辛ェェェ!!!」


火薬に手裏剣にタバスコ。予想外の物を顔から必死で拭い払おうと顔面を手で抑えるも。


「だから、血ィ見るって、言ったのによ」


「エ?…げふぅぅぅ!!!」


顔面にとどめの蹴りが突き刺さり、残り三人は空に吹き飛んだ。ため息混じりに水音三つに背を向けて、料理人は出てきていいぞと促せば、キッチンの扉から震える鼻がひょこっと飛び出した。


「さすがじゃねぇか」


「ま、ま、まぁなっ。攻撃あってこそのおれだからな…」


「バーカ。てめぇの守りあってこそだろ」


少し落ち込みかけたところに鼻をぐいっと摘まれる。狙撃手が顔をあげれば料理人の表情は緩んでいて、狙撃手の顔もまたぱぁっと輝いた。


「さて、おやつにするか?」


「お、おうっ!!手伝うっ!!」


攻めと守りの共闘が終われば、あとは楽しい二人の午後。


―――
攻守。
書いてから攻めの料理でもありかと思ったけど守れないのでやめました←
 

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