兄さん誕生日2015 3
□静謐なる空間
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16時からしばらくすぎて、サニー号を囲む海は、静謐な空間に戻っていた。
「だいじょうぶだった?」
「だいじょーぶ!!でもいろいろわかんねぇことがいっぱいあって。聞いてきたこと教えてくれる?」
航海士たちは町から戻ってきていた。彼らに先ほど起こったことを電伝虫で聞いて、顔色を蒼くして戻ってきたから、何やら先ほどの海のことを聞いてきたようだ。
「あのね、サンジ君」
「おれも聞くー!」
「あんたはたぶん頭が沸騰するわよ」
「失敬だな!」
船長が料理人の肩にもたれかかるようにして話を聞きたがって来た。航海士は仕方ない、被害者だし、と納得することにして、話し始めた。
「あそこはね、海賊が一人死んでるの」
「え?」
「悪魔の実の能力者で、ミセミセの実の能力者。見せたい相手に幻覚を見せることができるのよ」
航海士はもう煙を出しかかっている船長をほうっておいて話を進める。
「町の人たちに幻覚を見せていろいろ悪さをする悪党だったらしいの。死人の姿を悪霊にして見せたり、ひどい幻覚を見せたり」
「うん」
「それで町の人が意を決して、海まで追い込んで落としたの」
料理人はなるほど、と納得した。悪魔の実の能力者なら、海に落とせばカナヅチ。誰も助けてくれないのなら溺れてしまうだろう。
「でもね、その時から、この海に奇妙な現象が起こるようになったんだって」
「それが、さっきの?」
「そう。悪魔の実の能力者には普通の海に見えるんだけど、他の人には呪われた姿が殺された毎日16時からしばらくの間見えるんだって」
「だからおれとルフィは普通の海に見えたんだな!」
船医は納得したように言った。航海士もそう、と同意する。
「だから町の人たち、こっち側の岸には近づかないんだって。呪いが見えちゃうから」
「じゃあ、おれ」
助け損?とため息をもらす。すると、隣で話を聞いていた考古学者がくすりと笑った。
「そうでもないわよ、サンジ」
「ロビンちゃん?」
「あなたがガイコツを引っ張り出したことで、呪いがやむかもしれないわ」
「そ、そんなもん?」
「ええ」
考古学者は頷く。
「ガイコツ、崩れちゃったんでしょ。だから、もう効果ないんじゃないかしら。悪魔の実の能力が海に落ちたままホネになってまで続くことがおかしいもの」
「そっか」
「よくわからねぇけど、よかったな!」
船長はしししと笑って料理人にもたれかかった。料理人は呆れながらもぐうっと彼を持ち上げて笑う。
「じゃあ。まぁ、この件はこれで終わり、かな?」
「ええ。そうしちゃいましょ。明日にはここでるし」
「わかった!!じゃあ、メシだ!!」
船長はぴょいっと跳ねて彼から降り、料理人はやれやれ、と呻きながらキッチンに帰る。
彼らの知らないどこかの木に、ひっそりとぐるぐるブドウ型の実が、出来上がった。
――
これでおわり、なのかな←