兄さん誕生日2015 3
□沢山の繋がり
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「どうした」
剣士が、静かに問うた。相手は、新しく仲間に入ったばかりの音楽家だ。料理人が注いでくれたお茶をキッチンで啜りながら、ゆったりと騒がしい窓の外を眺めている。
窓の外では、航海士と考古学者に料理人がお茶を差し出していた。添えてある茶菓子。狙って伸びてきた腕。がん、とすばやく料理人が蹴飛ばして、ギャーギャーと追いかけっこを始めている。船大工と狙撃手は新しい発明の打合せだろうか、甲板であーだこーだ話をしている。船医は、それを興味深そうに見つめ顔を輝かせている。いつも通りの風景が、そこにはあった。
だが、音楽家はそれを愛おしそうに眺めていた。だから、剣士が気になって声をかけたのだ。音楽家にも彼の感情が伝わったのか、ゆっくりと顔をあげて答える。
「いえ、ただ久しぶりなんです」
「久しぶり?」
「こんなふうに、たくさんのつながりの中で生活するのが」
そうか、と剣士は小さく納得した。音楽家は一人ぼっちで海に漂っていたのだと後から船大工から涙ながらに聞いた気がする。音楽家は前から仲間にいたように底抜けに明るいから、まったく気づかなかった。
「だから、見るだけでも、楽しいんです。ヨホホ」
ゆっくりと紅茶を啜って、彼は笑った。剣士は、ちらっとそれを見て頷く。
「確かにな。だが」
剣士は含みを込めた笑みを浮かべた。音楽家が首をかしげる。
「ゾロさん?」
「そろそろ、見るだけじゃなくなるぞ」
どういう意味、と問う前に、理由がわかった。
「ブルック―!!!!一緒に菓子くおおおおおう!!!!!!」
「待てこらクソゴム!!!レディのもの盗むんじゃねぇぇぇぇ!!!」
「ヨホ!!!!?」
船長の伸びた腕が、音楽家をかっさらって行った。それを追うように料理人が駆ける。それを見送りながら、剣士は笑った。
「……それ見ろ」
この船では、見てるだけなんて到底無理だ。そうつぶやきながら、剣士は外で狙撃手が呼ぶ声に答えるように向かって行った。
――
剣士コンビいいっすね。