兄さん誕生日2015 3
□細かな細工
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「な、なんなんだこの異様な空気」
船大工は驚いたように言った。ある日の昼日中。休憩がてらコーラをぐいっと煽ろうとしてキッチンに入ったところに広がった光景に。
それもそのはず。いつも賑やかなはずのキッチン。今日は狙撃手と料理人が楽しげに料理を作っているはずだ。だが、彼らは真剣にテーブルの方を向いて、何かをピンセットでいじっている。
「おい、何やって」
「ちょっと待った!!!」
狙撃手はぴしゃりと叫んだ。ピンセットで何かをいじり、そしてふうと一息つく。
「どうしたフランキー」
「どうした……っておめぇらがだよ。何をそんな真剣に」
テーブルの上を見た船大工はぴたと固まった。へへ、と狙撃手は照れたように鼻の頭をこする。料理人はそちらを向かないまま相変わらず作業をしているのだが。
「サ、ニー?」
「そう。サンジとちっちゃいの作る予定だったんだけどよー。凝り始めたら止まらなくてさー」
料理人は真剣にマストを作っているらしい。狙撃手はどうやら芝生の草を再現しようと頑張っているらしかった。いずれも細やかな細工なんてものを軽く超越している。船大工はそれに引き込まれた。いや、それ以上だった。
「あ、フランキーももし手が空いてたら手伝って」
「ばがやろおおおおお!!!!!手があいでなぐでもでづだうわわああああああ!!!!!」
「わわわ悪かったよ黙ってたの!!!!!だからゆらすなって!!!!」
船大工はわがってらぁと頷いて、空いている席に腰かけた。そこに転がされたピンセットと、熱い飴の塊。
「徹夜、覚悟しろ」
料理人が小さく笑いながら言えば、船大工はにやりと笑った。
「おうともよ」
一味一手先が器用な彼らは、協力して夢の船の飴を作り続けた。その顔は、疲れ知らずで、輝いていたままだったという。
――
サニー飴とか売ってたら即買い。