兄さん誕生日2015
□種族の違い
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「なぁ、ジンベエ」
「なんじゃチョッパー」
「しゅぞくって、むずかしいな」
魚人島での宴中、船医がぽつりとそんなことを言った。他の一味は歌えや食べや踊れやで忙しそうにしている中、一人だけ悲しそうな顔をしている。
「ほう」
それを聞いたジンベエはゆっくりと船医の方に寄った。船医は気づいてくれたのがうれしかったのか、飲み物を啜ってぽつりと言う。
「おれは、トナカイだけど、ルフィたちがちゃんと受け入れてくれてるんだ」
「……」
「でも、昔は無理だったんだ」
「それと、同じ」
ジンベエは静かに言った。
「この島も、人間を受け入れようとはせんかった。昔はな」
ジンベエは船医をひょいっと抱え、辺りを見渡させた。
「でも、今は」
「……!」
船医の目に映ったのは、一味と酒や食べ物を呑み食いかわしながら、騒ぐ魚人達。
「わしたちの船長のおかげで、人間と魚人は仲良しじゃ」
ジンベエはにっこりと笑った。わしたちの船長。そんな言葉を聞いて、船医は心がじんわりと暖まるのを感じた。
「へへ、そうだなっ」
嬉しそうに返して、船医は悲しげな顔を笑顔にした。そして、宴の輪の中へと飛び込んでいく。
種族を超えた交流が、そこにはあった。
――
魚人島の話。