兄さん誕生日2015
□真昼の月
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「夜以外に月がでることってあるか」
今晩は満月だった。深夜の甲板を月が照らし、青々と茂る雑草を照らしている。その中剣士が酒を煽りながら料理人にそんなことを問うた。料理人はつまみを出してやろうと塩タンを持ってきたが、酒に誘われたらしい。ため息交じりに酒をちびっと煽る。
「あるな」
「あるのか」
「見たことあるだろ。夕方の月とか朝の月とか」
料理人は一枚だけと牛タンをつまむ。しっかりとかみしめながら、また酒をぐっと飲む。剣士はなるほど、と同じように牛タンをつまんだが、まだ何か気になることがあるようだ。
「昼の月はねぇのか」
「昼は太陽に譲ってやれ」
「……」
剣士はなるほど、と小さくうめいた。だが料理人はその様子を見て息をつく。
「お前は、一回見たことあるだろ」
「あぁ?」
「昼の月」
剣士ははて、と考える。覚えがない。まったく。それを読んだように料理人がまた酒をぐいっと煽って付け足した。
「エニエスロビーだよ」
「エニエスロビー?」
「ロビンちゃんがさらわれたとこ。不夜島って呼ばれたところだ」
「最初っからそう言え」
剣士は呆れたため息をついた。料理人はなんだと、と食って掛かろうとしたが、残りの酒を流し込むことで我慢した。
「第一あまり覚えてねぇ」
「だろうな。第一太陽が光ってあんまり見えねぇし」
「お前は見えたのか」
「あー。一瞬な」
「どうだった」
料理人はふっと笑った。空のきらきらと輝く星たちと一緒に揺れている月を見ながら、
「夜見る方が、いい。で答えになるか」
剣士はまばたきしたが、自分も月を見上げて、
「……だろうな」
そう答えて、酒を煽る。月の光と一緒に飲み込む酒は、ことさら美味に思えた。
――
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