兄さん誕生日2015
□世界の果て
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「ゾロ、遊びにきたぞっ」
「おれは忙しい」
「いいじゃねぇかー!」
ある日の午後。剣士がトレーニングに励んでいると、船長が現れた。どうやら遊び相手がほしいようだ。剣士は呆れた顔でダンベルをふる。
「ウソップかチョッパー……いや、アホコックにでもかまってもらえ」
「ウソップはつりしてるけど釣りの気分じゃねぇし、チョッパーは薬作ってるし、サンジはおやつ作ってる!」
「フランキーとブルックは」
「二人でなんか発明してるんだ!だめだ!」
「ナミとロビンは」
「ナミとロビンはがーるずとーくしてるから駄目だって!」
「……全員断られたのか」
剣士は、まとわりつく船長に少しだけ同情した。うーんと少しだけ考えた後、またダンベルを上げ下げして、
「じゃあいてもいいから少し望遠鏡でも覗いてろ」
「わかった!」
船長は素直に望遠鏡を覗いた。よっぽど暇なのか。そう思いながら剣士は彼を見つめる。
「なんか見えたか」
「んー!海ばっかだな!」
「そうか」
まだ島の気配はないらしいし当然か。納得したようにまたダンベルをあげる。
「ゾロー。望遠鏡ってなんでこんなにいろいろ見えるんだ?」
「さぁな。でもいろいろってほど見えねぇだろ」
「いや、んなことねぇぞ。かもめとかさかなとかもみえるぞ!」
「へぇ」
意外と詳しく見ているのか。剣士は感心した。船長はしししと笑う。
「でもな、ゾロ。望遠鏡、見えすぎなくていいな!」
「あ?」
突然そんなことを言うものだから、剣士は瞬きした。船長は続ける。
「だってよ、ぜぇんぶ見えちまったら、おもしろくねぇだろ!」
「……なるほど」
剣士は納得した。彼は冒険を楽しむ男だ。最初から全部見えてしまったら、決して楽しむことはできないだろう。
「じゃあ、誰かがそのうち全部見えちまうのを作ったらどうする」
「全部?」
「世界の果てまで、全部」
船長はうーんと悩んだように言った。考えている間はダンベルを上げ下げしながら、船長の回答を待つ。
「ぶっとばす」
「おいおい」
「だって、おもしろくなくなるから、おれがいねぇとこで見ろっていう!」
「……そうか。なら」
剣士はまた考えた。それに対して、船長がまた応答する。こうして船長と剣士の暇な時間は、まったりとつぶれていくのだった。
――
二人の絡みとかいい。最近少ないけど。