兄さん誕生日2015

□巡り巡って
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「ん?」


船長は、首を傾げて甲板から何かを拾い上げた。星のついたヘアピン。航海士や考古学者がごくまれにつけているものだ。まったく、こんなところに落としやがって。そんな一船の主らしいことを言いながら、ひょいと拾い上げておくつろぎ中の航海士と考古学者のところに持っていく。


「ナミっ、ロビン!!落ちてたぞ!!」


船長はヘアピンをずいっと突き出した。航海士はくすっと笑って、ごめん、ありがとうと呟こうとしたが、小さく瞬きする。


「これ、私のじゃないわ」


「えっ、じゃあロビンか!!」


「私でもないわよ」


考古学者が反応して首をふった。船長はむーっとなる。


「じゃあ誰だっ!!」


「フランキーじゃない?最近変な髪にこってたから」


航海士が提案した。船長はほわんほわんと船大工の姿を思い浮かべる。確かに最近はリーゼント以外にも二つ括りとかしてたような気がする。


「わかったっ」


ありがとう、と呻いて船長は船大工のいる地下に向かう。すると、そこには船医が船大工の膝にのっかって発明を見ている姿があった。


「あ、ルフィ!!」


「おめぇもなんかやるか!」


「やるっ!!!」


船長は勢いよくそう言ったが、はっと我に返ったように手に持ったヘアピンを見る。


「あ、あとでっ」


「なんだ、なんか用事か?」


「これ、フランキーのか?」


船長は船大工にヘアピンを突き出した。船大工はじぃっとそれを見やる。


「ファンキーな星型だが覚えはねぇな。チョッパーは?」


「おれ髪の毛ねぇぞ!!」


「じゃあ違うのか」


船長はうーんとさらに悩んだ。船医がぽんと手を叩く。


「わかった、ブルックだ!!」


「ブルック?」


「最近カミゾメにはまってるって言ってたから、ピンもいるんじゃないか?」


「おお!!ありがとうチョッパー!!」


船長は嬉しそうにしながら、音楽家のいるアクアリウムバーに向かった。


「バーなんだから酒だせアホコック!」


「バーカマリモ!!昼間っから飲んでたらなくなるだろうか!!」


「まぁまぁお二人ともかっかしないで。牛乳が足りませんよ、ほら私のボディはカルシウムたっぷりでイライラなんて」


「ブルック―!!」


相変わらずケンカをしている剣士と料理人の間を横切り、船長は音楽家に声をかけた。音楽家は牛乳瓶を傾けながら、


「おや、ルフィさん。牛乳でも?」


「おれ肉がいい!サンジ、肉!」


「お前もTPOをわきまえろ!!」


「けちー」


「けちじゃねぇ!」


「ルフィ、お前何もってんだ」


ぎゃーぎゃー言い合う二人を尻目に、剣士が船長の手のヘアピンに気づいた。そうだった、船長は呻いて、ヘアピンをかざす。


「これブルックのか?」


「えー……こんなのつけたことないです」


「ナミやロビンは?」


「さっき聞いた。ゾロのか?」


「そんな邪魔なもんいらねぇ」


「じゃあサンジか?」


「おれも違……あ」


料理人は少し考えるような顔つきになった。船長はまばたきする。


「心当たりあんのか!」


「確か、ウソップが欲しがってた気がしたな。だいぶ前になんか……」


「ほんとか!!ありがとうっ」


船長は嬉しそうにして、裏甲板で釣りをしている狙撃手の元に向かった。


「おー、ルフィ。今日も順調にぼうずだぞー。お前もやるかー?」


「やるっ!でも先にこれだっ」


「お」


狙撃手はかざしたヘアピンを見た。


「おれのだルフィ。どこに落ちてた?」


「甲板!」


「そうか、落ちちまったんだな。ありがとう」


狙撃手は船長からヘアピンを受け取った。そして、手慣れた手つきで、それをポケットに挟む。


「つけねぇのか?」


「あー、これ、ボタンがとれちまったときの代役だからよー。髪にはつけねぇんだ!」


「へー」


「よし、じゃあ、ルフィ。釣りやろう!!」


「やろう!!」


ヘアピンは巡り巡って、もとの持ち主の元に帰ったようだ。


――
洗濯とかよりこっちのが船長はよろこんでやりそう。

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