兄さん誕生日2015

□蝉しぐれ
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「あっちぃー」


「あっちぃー」


セミが喧しいくらい鳴り響く夏島。麦わらの一味は少しでも涼を得ようと甲板にパラソルをたてて転がっていたが、影の中でも暑さは忍び寄る。どの一味も半袖で、暑い暑いとうめきながら料理人が運ぶ冷たい飲み物を飲んでいた。


「サンジぃー。おかわりぃ」


「んー」


料理人は船長の言葉に素直に頷いてドリンクグラスを渡した。いつもはスーツな彼もアロハシャツを着て、なんとか暑さを凌いでいる。


「ありがとなー」


「んー」


船長は、瞬きした。返事がさっきと全く同じだ。キッチンに帰ろうと日差しの外に出ようとする料理人を引き止め、ぐいっとパラソルの中にとどまらせた。料理人はぽかんとした。


「どーした」


「きゅーけいだサンジ!」


「なんで」


「しんどそうだからだっ」


大丈夫と力無く返した料理人に触れる。やっぱり、体は熱くなっていた。船長はむーっとなり、狙撃手はサポートするように椅子を出した。料理人は反論する間なく椅子に座らされる。


「はいドリンク」


「え」


「はい、タオル」


「あのな……」


「はいチョッパー」


「サンジー!!何やってんだ!休まなきゃって言っただろ!」


料理人は気づいたらおくつろぎムードにされていた。反論しようと口を開いたが、彼らの顔を見て止めた。呆れた顔で、椅子にもたれかかる。


「お前ら、夏のセミよりくちうるせぇな」


「なにぃ?」


そんなことを言われてむっとした三人だったが、料理人は口元を緩めていた。


「……でも、不快じゃねぇよ」

料理人はそう呟くとさっと目をそらした。彼らの顔は笑顔にかわっていた。


――
世話焼き三人。世話やかせでもある←

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