2015年兄さん誕1

□心躍る冒険
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船長は冒険が大好きだ。島に着く、いやつく前からそわそわして、冒険の香りを感じ取り、島の影が見えては冒険のにおいがすると声高らかに叫びながら、顔を輝かせる。


「いくぞ!!!冒険っ!!」


昨夜。島に停泊して、次の日に上陸をすることになっていたから、朝の船長のテンションは最高潮だった。いつもは寝ぼけているのに自分からばっとおきて、料理人の作業中のキッチンにかけていく。料理人はおはようさん、とあいさつしたが、耳に入ったか入らなかったかのうちに、船長は大声で叫んでいた。


「サンジ!!!海賊弁当!!!」


料理人は、やれやれと呻くが口元は笑っていた。海賊弁当とは肉中心で野菜抜きの船長が大好きな弁当だ。いつも冒険に行くときは、これを料理人に昼食代わりとして頼むのである。


「あいよ。朝飯は」


「食ってく!!!力つけねぇと!!」


船長はぶんぶん腕を回していった。料理人はだろうな、と笑って、朝食作りに戻る。船長はその間にきょろきょろとあたりを見渡した。はっとなって男部屋に帰り、まだ寝起きでもごもごしている男たちを尻目につみあがった服の山をごそごそする。


「なにやってんだぁ、散らかして」


船大工がボタンで出したリーゼントを整えながら首をかしげる。船長は困ったようにフランキーと呻いて、


「リュックなくなっちまった!!」


「リュック??」


「うん!!べんとーいれ!!」


「あー……」


船大工は少し悩んだように言った。


「もしかしたら、Z襲撃で燃えたんじゃねぇの?」


「ええええ!!!じゃあ弁当どうするんだ!!」


「りゅっくぅ?」


今度はあくびをこぼしながら起きてきたのは狙撃手だ。目をこすり、眠気を覚ましながら船長に近づいてくる。


「いつも持ってったリュックが燃えちまったんだと」


「あー……なるほど」


狙撃手はごそごそと自分の服入れをあさった。そして、


「ほら」


「リュック―!!!!」


狙撃手が投げてよこした青いリュックに船長は飛びついた。船大工がぱちくりと瞬きする。


「なんだ、おめぇが持ってたのか」


「ちがうちがう。おれのだ。おれカバンあるしさー、あんま使わねぇから」


「ありがとうウソップ!!!」


「おー。なんかおもしれぇもんあったら持って帰ってきてくれよ」


「うんっ!!」


船長はご機嫌でリュックを背負って男部屋を後にした。そして、キッチンに向かう。お弁当をしっかりとリュックに入れて、朝食を他の一味と楽しんで、そして、ようやく。


「んじゃ!!行ってくるぞ!!」


「気を付けてね」


「迷子になるなよ」


「ゾロじゃねぇからならねぇっ」


「オイ」


いつものように一味に見送られながら、船長は船を飛び出した。彼を待ち構えている、心躍る冒険の世界へ。


――
船長は本当に冒険が似合う男だなぁ。

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