2015年兄さん誕1
□真っ黒な画用紙
1ページ/1ページ
「どうするー。チョッパー」
「うーん」
ひらり、と悩む狙撃手と船医の前で紙が揺れる。紙、と言っても、まっ白くてお絵かきに使えるような紙ではない。真逆の真っ黒な紙だ。しかも、ちょっと固めの画用紙だから、折り紙にも使えない。
「ラスト一枚なんだよなぁー」
「だよなぁー」
他のカラフルな紙があったなら、何か別のことに使えるかもしれないが、きっかり一枚しかない。どうしよう、と頭を悩ませていると、ぺたぺたと草履の音がした。
「なふぃやっへんは?」
もごもごと何か食べながらの言葉。狙撃手が反応する。
「あ、ルフィ……って何食ってんだお前!!」
「おふぃぎりだ!!ふぁんひにつふってもふぁっふぁ」
船長はずいっと食べかけのおにぎりを突き出してにぃっと笑った。つやつやと光るコメ。食べかけのお山からは赤い梅干しがちらっと覗いている。狙撃手と船医はたらーっとよだれをたらしたが、ぶんぶんと首を振った。
「そうだルフィお前も考えてく、れよ」
「この黒い画用紙のつかいかた!!」
船長の方を見たが、やっぱり視界はおにぎりの方へ。炊き立ての香りがする。そして、黒い海苔がそれを包むかのように磯の香りを放って。狙撃手はぽかんとした。
「のり」
「え?」
「黒と白!!!」
「えええ!?」
狙撃手は嬉しそうに顔を輝かせた。ぽかんとしている船長と船医をさておいて、黒画用紙をひっつかんで男部屋に飛び込んで行った。
「どうひはんは、ごくん、ウソップ」
「わかんない」
「じゃあ見に行こうっ!!!」
船長はおにぎりを飲み込むと、船医をかかえて男部屋に駆け込んだ。すると、狙撃手がにぃっと笑って、テーブルの前で手招きしていた。船長と船医は瞬きしたが、テーブルを見た瞬間、わっと喜びの声をあげる。
「いっぱい余ってたんだ」
机の上には、たくさんの白クレヨン。黒い画用紙の上には、おにぎりがちょこんと書かれていた。
「これで今日はお絵かき大会だ!!!」
「やるーっ!!!」
船長と船医はテーブルに駆け寄り、白いクレヨンをめいめいとって落書きを始めた。狙撃手も負けじと落書きを始める。
狙撃手の発想で、今日は楽しい昼下がりになったのだった。
――
彼の発想力をわけてほしい←