2015年兄さん誕1

□涙零れる
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床にぽたぽたと零れる雫。ここは、トレーニングルーム。剣士が普段からトレーニングをしている場所だ。実際、剣士はそう思って梯子を登ってきた、筈だった。いつものようにダンベルをふって、いつものように腕立て伏せをして、という感じで、しっかり体を鍛えようと思っていたのだ。


「うぐっ、ひぐっ」


「……」


だが、剣士はかちんと固まってしまった。ダンベルに手を伸ばす前に。涙を溢している船医に気づいたからだ。船医は、剣士が入ってきたのに気づいているのか気づいてないのか。ひたすらぼろぼろ泣き続けている。


「……」


剣士は、悩んだ挙げ句ダンベルを取り上げた。気がすむまで泣かせてから話でも聞こう。そう思って。


「えぐっ、ひぐっ」


「……」


だが、一行に。


「ぐすっ。えぐっ」


「……〜っ!」


泣き止む気配は見られない。


「……どうした」


剣士はついに折れた。ダンベルをへりにひょいっと置いて、船医の方に視線を向ける。すると、船医。やっと剣士がいることに気づいたらしい。慌てて涙をグシャグシャ擦るが、止まる気配はなかった。


「別に、叱ったりしねぇよ」


「おどごがなくの、なざげなぐねぇのか?」


「理由がありゃいいだろ」


剣士はすっぱりと言った。船医はそっかぁ、と安堵したように呟いて零れる涙を擦った。


「あのな、ゾロ」


「なんだ」


「おで、なざげねぇがなぁ」


「何が」


剣士は短く聞いた。船医は涙を啜りながら、船医は先程の船番のことを説明する。


自分は、医学の勉強をしていた。船番の相方である狙撃手と料理人はキッチンで寛いでいた。船医はそれで安心しきってしまいすっかり実験や勉強に夢中になった。


そして、あらかた自分の作業を終えてキッチンにいけば、狙撃手と料理人の姿はそこにはなく。


「お、チョッパー。夢中だったなお前」


「なー。敵来ても気づいてねぇもんな」


なんてからから笑いながら甲板で後片付けをしていた。しかも、狙撃手の頬にはかすり傷がついていて、料理人は片付けのせいかスーツを汚していた。あぁ、やってしまった、そう思った。


「……まさか、それで泣いて逃げてきたのか」


「だっでぇ、おで。船番すっぽかして迷惑がげだんだ」


剣士は船医の言葉にため息をついた。呆れられている、そう思って船医はさらに泣き、トレーニングルームを出ていこうとしたが、


「来い」


剣士はそれを遮るように彼を抱えあげた。船医は嫌だと拒否したが剣士は離さない。彼を鍛えた体で抱えたまま、トレーニングルームの窓に近づく。


「見ろ」


「い、いやだっ」


「いいから」


剣士は静かに諭した。船医は剣士の言葉に小さくうなずいて窓のそとを眺めた。


「チョッパー!おれたちなんかわるいことしたかぁー!?出てこいよぉ!」


「ウソップのけがなら転けただけだから安心しろー!」


「ばかっ!恥ずかしいからやめろ!サンジが倒した敵につまづいたとかいうなっ……あっ」


「……バカ」


船医は、ぽかんとした。彼ら二人とも怒っていない。むしろ、なぜチョッパーが泣いているのかしか気にしていないようだ。


「ほらみろ」


剣士は言った。船医は涙をぐしゃぐしゃっとぬぐって、うなずいた。


「ありがとう、ゾロ」


そういいながら走っておりる船医を、剣士はあくびひとつで見送った。


――
こういうね!!仲間に何か教える仲間って!!!すごくいい!!!

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