2015年兄さん誕1
□鮮やかな空
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太陽は照らす。青い青い空を。暗い暗い城を。黒い黒い闇を。全て、いっそう明るく照らす。
音楽家がこんな鮮やかな空を見たのは、久しぶりだった。いや、正確に言えば、まともな空を見たのは久しぶりだった。いやいや、久しぶりどころか、何年ぶりかもわからないくらいだ。
正直、昨日は夢だと思った。一日から二日。たったそれだけの短い間に、彼を取り巻く状況が曇から晴れに変わったのだ。いや、雨から晴れ、と言っても過言ではない。
ばったばったと敵を倒しただけでなく、新たな敵からも仲間を守り守られ。そんな固い絆をもった一味に受け入れられたこと。しかも、その仲間が、ずうっと約束をしていた仲間がまだ待っているし新たな約束もしてきたと嬉しそうな笑顔を浮かべていたこと。
日も当たらない船の上で一人ぼっちだった自分が、またこうやって日の光をたっぷりと浴びながら、ゆっくりと記録かたまるのを仲間達と待ちながら過ごすことができるということ。
彼にとって、幸せ過ぎて未だに信じることができないことだ。だから、ついつい目の前にある真っ青な空を吸い込まれるように見てしまう。ゆったりと流れていくちぎれた雲の流れでさえ、彼にとって興味深く面白いものに思えた。
「なんか見えるかー?」
「ルフィさん」
気づけば、音楽家のとなりに船長が腰かけていた。んー、と音楽家が見ているものが気になるように、目を細めて空を見ている。
「みなさんは?」
「んーと、ゾロはまた起きてねぇ。サンジは怪我まだちょっと治ってねぇから寝てる。チョッパーはウソップと二人看てる。ナミはなんとかってやつにロビンと会いにいってる。フランキーは修理!自分を!」
指折りしながら挙げていく様子に、音楽家は感心した様に笑った。
「ヨホホ、ルフィさんはみなさんのことよくみてますね」
「当たり前だ!船長だからなっ」
「それは頼もしいですねぇー!」
胸を張った船長にまた嬉しそうに笑いかける。船長は、だろとうなずいて音楽家を見た。
「ブルックは何してんだ?」
「空を見てます」
「空だけか?」
「えぇ」
船長はふーんと呟いてまた空を見上げた。くーくーとカモメが鳴きながら空を群れをなして渡っているところだった。
「おもしれぇか?」
「えぇ。久々ですから」
音楽家の一言に、船長はまたしししっとわらった。
「そっかっ!」
音楽家は、彼が自分の意思を汲み取ったのだとわかった。だから、それだけ返事をして横に座ったのだ、と。まだあって間もないのにそんなにも自分を理解するなんて。
「じゃあ、おれも空見るぞっ!」
「えぇ!一緒に見ましょう!」
この太陽のように広い理解をもつ船長なら、着いていっても大丈夫だ。改めて、そう思った。
――
ブルックさんとせんちょ。