2015年兄さん誕1

□超感覚
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さわさわと冷たい潮風が吹き、雲がゆったりと空を動く夜。明かりのない海に囲まれた船の上で、ちいさな明かりが生まれた。明かりは髭下の口元をぼんやりと映し出すと消え、紫煙となって空に昇っていく。


「……」


金色の髪が、月明かりに浮かぶ。煙草をくわえたまま空を見上げ、疲れた顔を星に見せる。小さなため息とともに、紫煙をゆっくりとはきだした。何故か首筋についた傷口が、ぼんやりと青白くにじむ。


「どこ行ってたんだ」


ゆっくりと近づいてきた影に振り返る。揺れるアロハシャツとリーゼント。フランキー、と呟いた彼の側に、船大工はゆっくりと腰かけた。


「別に…でっ」


「このアニキにとぼけても無駄だ」


船大工はあきれまじりで傷口に触れた。料理人は船大工を睨んだが、船大工は真剣な瞳で彼を見返した。


「おめぇが優しい奴なのは知ってるがな。こーいうの、見過ごしちゃおけねぇのよ」


「なんで」


「わざわざ言わすな。わかってんだろ、賢いおめぇなら」


料理人は小さく頷いた。彼らは仲間が勝手に隠して傷ついたり無理をしたりするのを嫌う性質だ。だから、見過ごしてはおけないのだ、ということを知っていたからだ。


「わかったら話せ」


「・・・わかった」


料理人はため息をついて、船大工に語り始めた。


料理人は、見聞色の覇気に優れている。そのため、危険が近づけばすぐにわかる。
今回は、船番をしていると海賊船が数隻近づいてきているのがわかった。だから、空を翔けて偵察に行き、こちらの船を狙っているのだと分かり攻撃し、殲滅した。首の傷は、一矢報いろうと刀を振り回した敵にやられたものだ。毒などは入っていない筈だ。多分。


それだけ一気に話しきると、料理人は少し傷跡を押さえた。船大工はまたため息をついて、料理人を大きな手のひらでぼふぼふ撫でる。


「ったく、なんで誘わなかった」


「よく寝てただろ。起こすの面倒だったんだ」


「やれやれ、物は言い様だな」


「るせぇ」


料理人は怠そうに息を吐く。船大工はにやと笑って、料理人の肩をぐいと寄せた。料理人は何を、と言いかけたが、ぴたと言葉を止めて、むすっとした表情になる。


「だとよ、お前ら」


「許せるかー!!」


影から現れた一味は、料理人をぐるっと囲んだ。面倒なことになった、とため息をついていると、船長がずいっとせまった。


「サンジ!」


「わかった」


「まだなんもいってねぇぞ!」


「でも、もう、言いたいことはわかるって」


料理人は静かに言った。船長は料理人が本当のことを言っているとわかったが、納得はいかなかった。だから、問う。


「反省してんのか」


「してるよ」


すばやい返答。だが、やっぱり納得しない。もう一回、付け加える。


「もうしないって、約束は」


「多分」


「出来てねぇじゃねぇか!」


やはり、というように船長は怒鳴った。料理人は、へいへいと頷きながら頭をかく。ごまかすように逃げようとした体は、がしりと機械の腕につかまれた。船大工がにやりと笑った。


「サンジは説教と怪我治しだっ。フランキー部屋にいれろー!」


「任せろ船長」


「フランキー、このっ」


料理人は悪態をつきながら、船大工に抱えられ部屋に連れ込まれた。だが、そんな彼の顔はもう疲れ切ってはいなかった。


――
すでにうpしてたらごめんなさい。
 

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