2015年兄さん誕1

□天上に輝く
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星を見るのは、わりと好きだった。今まで色んな人間と、いや動物ともだが星を見てきた。麦わらの一味とはもちろんのこと、ヤギだったりらくだだったり。場所も船はもちろんのこと、丘の上だったり砂漠だったりしたこともあった。


その日は、雲ひとつない晴天の夜だった。今日は船番。もう一人の船番の船大工は地下室にこもっている。キッチンから窓の外を見やれば、綺麗な光が闇の中でぱちりと光った。


「ようし」


料理人は何か企むように笑った。冷蔵庫からごそごそといろいろ取り出して、急いで何やら作っていく。かりっとしたトーストに卵やベーコン、トマトにレタスを挟んでお皿に盛り、あったかい紅茶をポットに入れて、ブランケットを鷲掴みにして、コートをばさりと羽織ると大急ぎでキッチンから飛び出した。


「おおっ」


冷たい階段に座り、ブランケットをはおり。そしてようやく空をあおげば歓声をあげた。天上に輝く満天の星空。赤青黄に小さくでも強く瞬いて闇を照らしている。料理人は、その空に夢中になった。


「……おっと」


だが、途中で我に返る。忘れてはいけないと皿に盛ったサンドイッチを片手に、紅茶を脇に添えて、また空を眺める。星空の美しい風景をおかずに、具があふれんばかりのサンドイッチをかじり、紅茶を口に運ぶ。何て贅沢な夜食だ、と思わず呟いた。しん、と冷たくて静かな空気。いつも騒がしい船でもこんな時間ができるのだ。そうなると殊更贅沢に感じてきた。たまには、こんな夜も悪くない。


「おぉ」


すると、声がした。地下室からひょっこり顔を出したのは船大工。同じように空をあおいで、歓声をあげている。ぱたぱたと手をふると船大工はにやりと笑った。さくさくと芝生の音を立てながら彼に近づく。そして、よっこらせだかなんだかいいながら料理人の隣に腰かけた。料理人は、まったく、と呻いた。


「コーラはねぇぞ」


「構わねぇ」


サンドイッチと紅茶を手渡しながら言えば、船大工は気が利くと感心したように料理人を叩いた。だが、それっきり。口を閉ざしたまま空を見上げ、サンドイッチを頬張っている。料理人はちら、とそれを一瞥してふっと笑う。船大工は、何だかんだで他の一味より大人だ。だから、綺麗な星空と静かな空気を味わうことができるのだ。もしとある他の一味がいたら、たちまちバカ騒ぎが始まってしまうだろう。それは悪くないことには違いない。だが、


「明日も見えそうだ」


「じゃあ、明日呼べばいいな」


今日は大人の時間だ。そう言って笑う船大工に同意するように頷いてブランケットを渡す。
星達は、見守り見守られて闇に輝いた。


――
アニキと兄さんコンビもっと増えろ!!!!
 

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