2015年兄さん誕1

□思い出の小箱
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映画ねじまきネタ↓








「かあちゃんのオルゴール、だけじゃなくなっちまったなぁ」


いさかいを終え、去り行く羊の海賊船を見送りながらアキースはそんなことを呟いた。手のひらには、小さな木箱。綺麗な音を発するオルゴールの箱だった。これは彼と母親の絆を繋ぐ大切な品。家族がわかった今でも、大切に持っている。


「海賊どもか」


ボロードは、アキースの肩に手を置きながら言う。アキースは、小さくうなずきながら小さな箱をぱかりとあけた。流れる音と共に思い出されるつい先日の戦い。たくさんの罠を掻い潜り、いろいろな怪我を負いながらも、仲間を取り返すために、そして、自分達のために戦ってくれた海賊たちを。利用しようと働きかけてきた自分達のために怒ってくれた海賊たちを。


「憧れたか?」


「バカいえ!おれは天下の泥棒兄弟だぞ!海賊になんか」


出かかった言葉が、うっと詰まった。傷だらけでも流れるような刀さばき、血にまみれた足から発せられた骨をも砕く蹴り、臆病者が仲間を守るために働いた勇気ある行動、仲間と死んだ方がましと面と向かって言いはった度胸。そして、自分達のために振るわれた怒りの拳が、目に頭に耳に焼き付いて離れない。


「んー?」


「ちょ、ちょっとしか憧れねぇやい!」


からかうように迫ったボロードから、ぷいと視界をそらした。自分の赤くなった顔を見られまいとして。だが、ボロードはふっといつものように笑って、アキースの頭をぽんぽんと押さえる。


「意地をはるな。おれだって、少しだけ憧れたんだ」


「え?」


「少しだけ、な」


顔をあげたアキースに、ボロードはこんくらいと指でさしながら笑う。アキースは、顔を輝かせる。


「じゃあ、おれたちは、あいつらを越える泥棒を目指そう!」


アキースの言葉に、ボロードはからかうように言った。


「世界一か。やれるか?」


「やれるさ!だっておれたちは!」


天下一の泥棒兄弟だからなっ!そういってアキースはどんと胸を張った。ボロードは、彼の真剣な顔を見て、


「……そうだな」


ふっと笑って頷く。アキースは、それでさらに自信を深めた。去り行く船に背を向けて、オルゴールの箱をぎゅうっと握りしめるようにして、船の奥に向かう。


「じゃあ、次に何を狙う?やっぱり世界一だから世界一のもの狙わねぇとな!」


「いや、まずは修行だ。あいつらを越えるなら、あいつらより強くならねぇとな」


「さすがボロード!何する?」


「まずは組手だ、かかってこいアキース!」


「合点だ!!」


今はまだ無名の泥棒兄弟。その名が世界的に轟くくらいになるのはまだ先の話。


――
ねじまき大好きすぎて
 

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