2015年兄さん誕1

□真っ直ぐ前へと
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『真っ直ぐ前へと』


「ぎぃやぁぁぁぁぁ!!食われたぁぁぁぁぁ!!」


「食われたァァァァ!!」


「そうだな」


「何で冷静なんだよお前らはぁ!!」


今日も順調な航海を続けていたサニー号だったが、今は真っ暗闇の中。海王類の胃袋に飲み込まれるという大きなハプニングが起きていた。


だが、そのハプニングで騒いでいるのは、船医と船大工と音楽家だけ。考古学者も、驚いてはいたが、他の一味が冷静だったため、騒がなかった。


「なつかしいなぁ」


船長が、小さく言って笑う。以前も、こんなことがあった。ただし、メリー号で冒険していた時で、船医、考古学者、船大工、音楽家はいなかった。王女やカルガモは乗っていたけれども。


「ルフィ、もちろん」


ぼそり、と呟いたのは狙撃手だった。彼はいつものように怯えてはいない。彼の武器を取り出して、静かに船長を一瞥した。船長は、強くうなずく。


「あぁ。先陣は任せるぞ!」


強い言葉と一緒に、剣士と料理人が前に出た。航海士が呆れた顔をしながら、援護の姿勢をとる。慌てていた船医達は訳がわからないまま、彼らの後ろに下がった。


「チョッパーが仲間になる前の島にな、偉大な男たちがいてよ」


狙撃手が、船医に背を向けたまま鞄をあさる。


「今と同じ状況になった時に、あわてふためくおれたちをこうやって助けてくれたんだ」


取り出したのは、緑星。準備はいいか、の一言もなく料理人が足を燃やし、剣士が刀を構え、航海士が天候棒を回し、船長が拳を鳴らした。狙撃手はそれを背だけで感じとり、カブトを引いた。


「我らを信じて、まっすぐ進めってな!!」


言葉と共に、吐き出された緑星。狼に形を変え、まっすぐ駆けていく。腹部に命中。だが、それだけでは終わらない。


「まっすぐ!」


黒い雷雲から吐き出された雷が、まっすぐ迸って緑に重なる。


「まっ」


「すぐ!!」


続くように、赤々とした紅蓮と青々とした青龍が、同時に色に厚みを加えた。闇が、ぐらりと揺れる。


「まっすぐだぁ!!」


最後に叩き込まれた漆黒の拳。全ての色を吸い込んで、音を響かせながら。やがて、光を連れ込んだ。青い空を、連れ込んだ。


「す」


「すっ、げぇ」


音楽家と船医が呻いた。闇は割かれ、サニーは光の中をまっすく前に進んでいる。何事もなかったかのように、背中を向けても笑顔とわかる仲間たちをのせて。


「よし、お前ら」


そして、漏れた嬉しそうな狙撃手の声。振りかえる。やはり、想像通りの顔だった。


「このとんでもない力で背中を押してくれた、師匠たちの話を、聞かせてやろう!!」


「おぉ!!」


「ぜひとも!!」


今日もサニーは、まっすぐ進む。障害や島なんてもろともせず、楽しい話と笑顔と一緒に。まっすぐ、前に。ひたすら前に。


――
あのシーンほんと大好き。
 

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