2015年兄さん誕1

□群れをなす小鳥
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『群れをなす小鳥』


「ブルック、なにやってんだ?」


今日も、快晴の中進むサニー号。マストに紐をひっかけて、洗濯物を干しながら首をかしげるのは料理人。ちなみに話しかけたのは、手伝いに来たのか遊びに来たのかわからない船長だ。料理人の足元の芝生にごろんと転がって、靴下を摘まんで引っ張っている。


音楽家はというと、何やらバインダーと紙を持って、空をじいっと眺めているだけ。絵でも描いているのか、いや、もしかしたらなにか別のことを。


「聞いてみりゃいいじゃねぇか!仲間なんだからよ!」


「バーカ、あんなに真剣なんだ。声軽々かけられっかよ」


料理人がたしなめるように言う。船長は膨れっ面をした。でも、やっぱり気になってしまう料理人。その膨れっ面船長と顔を見合わせて瞬きしあった後、干し終わった洗濯物を伸ばすふりをして、そろーりと抜き足差し足。船長も顔を明るくした後、料理人に隠れるように抜き足差し足。


「遠慮、なさらなくても」


上を向いたまま、掛けられた声にどきりとする。音楽家は、相変わらず上を向いたまま、骨ばった手でこっちにおいでした。二人はぽかんとそれを見つめる。


「いいのか」


「いいって」


納得するように、いや、させるように呟きあった後、料理人は音楽家の隣に正座して、船長は料理人の肩にもたれ掛かるようにした。そして、気になる、紙の方に視線を向ける。


「とり?」


「からあげ?」


「いやいや」


紙に書いてあったのは、絵ではなく文字だった。空、鳥、雲、太陽、見上げた中で切り抜かれた言葉たちが、散らかるように書かれている。


「歌のインスピレーションを」


「いんすぴれーしょん?」


「どんな歌にしようか考えるってことです」


音楽家が船長にも分かりやすいように説明した。船長はそれならわかるぞ、と自信満々に頷いて、また紙をみやる。


「なんで鳥だけこんなに多いんだ?」


今度は料理人が問う。彼が指差した先には、たくさんの鳥という文字が喧しく並んでいる。


「群れですよ、ほら」


「あー・・・・・・」


料理人は納得したように空を見上げた。空には海鳥たちが忙しそうに集まって魚をつついている。


「なんで、鳥、群れって書かずにたくさん鳥って文字書くんだ」


「こっちの方が群がってるのが分かりやすいんですよ。それに、ぱっとメモしてたらこうなっちゃいまして」


そんなもんか、と料理人は空を見上げる。これもまた、アーティストの感性の違いなのだろう。


「じゃあ、ブルック!雲も群れなのか?」


「雲は群れって言わねぇだろ」


「いえ、サンジさん。ルフィさんみたいなおもしろい発想、大歓迎です!」


「そんなもんか」


料理人は、流すそぶりをしながらもふーんと考えてみる。鳥や雲が群れなら、


「太陽は、ひとりぼっちか」


「ヨホ、なるほど」


音楽家が感心した声を出していると、船長が首をふった。


「サンジ!太陽はひとりじゃねぇぞ!雲と鳥は太陽と仲間なんだっ」


「じゃあ空は」


「空は海だっ」


「魚がいねぇから海じゃねぇ。せめて地面だろ」


「地面は茶色いから違うっ!」


「太陽に染まれば近い色になるだろうが!」


「よ、ヨホ!待ってください!メモとりますからっ!」


思わぬ方向に話が転がって、インスピレーションとなって音楽家の頭に広がっていく。二人のたわいのない言い合いが、彼にとって刺激となるようだった。


「じゃあ鳥の群れが魚で仲間だ!」


「意見をややこしくすんな!」


「ヨホ!どんどんお続けくださーい!」


今日は予想以上に歌作りが捗りそうだ。音楽家は鼻唄混じりで彼らの討論を聞きながら、空を見る。
鳥の群れが、太陽の光の中に迎えられて、輝いた。

―――
仲良し兄さんとせんちょ。チョパ+のアホっぽい会話が大好きです。ブルックさんは年代が違うから新鮮だろうなぁ。
 

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