兄さん誕生日その3
□スロウモード
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まったりとした午後。狙撃手がみんなで絵を描こうと言い出した。正確には色塗りをしよう。でかいキャンバスには、ひつじか魚か、よくわからない絵が大きく描かれていた。
「羊島の看板作りだっ!!これは後世の羊達に引き継がれるんだぞぉ」
「おおおおお!!!」
歓声をあげて、途中まではノリノリで色を塗っていた一味だったが、
「ほぉら、赤鼻のトナカイにしてあげるわぁ」
「…ナミ、なんかこの絵の具臭いぞ」
「絵の具じゃなくて、ペンキっていうの」
船医は航海士に笑顔で遊ばれて、鼻に赤色のペンキを塗りたくられている。
「こんなにゆっくりで、今日中に完成するのかしら」
「メエー」
「触っちゃダメよ。ついちゃうわ」
考古学者は青色ペンキに白色を流し込みながら、生やした一つの手で掻き混ぜ、もう一つの手で羊を押さえている。
「…いやぁ、いい風だなぁ」
「メエー」
「そのパイプうまいだろ。味わって吸えよ」
「メエエ♪」
料理人はキャンバスの上に乗って、りんごをかじっていた。剣士はその間黙々と水色を塗りたくっている。
「サンジも手伝ってくれよー。これじゃ今日中に終わらねぇよ」
「がんばれよ。あとちょっとじゃね…イーッ!?」
料理人が思わずぽかんと口を開け、剣士まで歯を剥き出しにして驚き、羊に青色のペンキを塗りたくってしまった。
「やーい、おにさんこちらぁ、てのなるほーへー」
「メエエ!!」
積み重なったペンキ缶を掴んだまま、船長は右に左にゆっくりと揺れる。
「なんだよぉ、サンジ。変な顔して」
「ああああああ」
「だぁかぁら、なんだっ…いいいっ!!?」
この後狙撃手は目撃するだろう。こちらにゆっくりと倒れて来るペンキ缶達と。せっかく塗ったキャンバスが、虹色に染まってしまうことを。
「…この一味は、絵を塗るのにたくさん時間がかかるわね」
考古学者が船長を見上げ、また混ぜかけのペンキに目を落とした途端、がしゃんと大きな音が響いた。
「ああああああ!!!」
「…今度はおれも手伝うから、な。あいつ隔離してゆっくりやろうぜ」
「…こういうこともある」
がっくりと肩を落とした狙撃手を、料理人と剣士が慰めたのだった。
色塗り、今日中に終わらないことが決定。
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アンケより。ご協力ありがとうございました。
うちの兄の部屋にジャンプから切り取ったこのポスターがあります。ほしいよぉ←