兄さん誕生日その3
□泡
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今日は天気がいいもんだから、洗濯を何からかにから持ってきて、盛大に全員で洗濯大会だ。洗濯板はたまたま近くで水浴びしていたワニの背中。なかなか固くて、泡も大量に出るから洗濯に最適だ。目に染みるだのなんだのはワニ殿に我慢してもらわなきゃいけねぇけどな。
「はーなーせー。そいつは食い物じゃねぇ!」
どうやらマリモ君はワニに協力してもらえなかったようだ。あーあー、ウソップの服が誘拐されかかってら。確かに肉っぽい色してるもんなぁ、アレ。
「見ろ!まふっとしてるぞ!」
「おれは洗濯物だぁ!!」
せっかく干したシーツに抱き着くゴムと、洗濯ばさみに干されるシカ。まったく、ナミさんが頑張って働いてくださって、ロビンちゃんはさっき頑張ってくれたから休憩してていいのにあいつらときたら…!
「お前ら遊ばずにマジメにやれ」
「えーっ」
「じゃねぇとおやつぬきだっ」
そう言えば、ようやくあいつらは状況を理解したように大慌てし始めた。
「おっおい、ウソップ!!それ持つぞっ…ありゃあ!?」
「ぎゃー!!ルフィが川に落ちたァ!!助けにっておれ下ろしてェ!」
「ぎゃー!!溺れる助けてぇぇ!!」
「ルフィーっ!!ってぎゃあ、足を持たねぇでくれぇ!!洗濯が零れるうう」
「…足つくわよ」
「…あっ」
…ダメだこりゃ。
おれは諦めて、洗濯に尽力することにした。擦れば擦るたび、たくさんの泡が出る。それを見るのが少し、おもしろくなってくんだ。
そしたらそれにつられたみてぇにルフィがふらふらしながら歩いてきておれにのさばった。ようやく洗濯ばさみから脱出したチョッパーも歩いて来る。
「サンジー、泡いっぱいだ。おれにもやらせろっ」
「おれも手伝うぞっ。サンジばっかやってたら手荒れちゃうからなっ」
…お、ようやくやる気になったか。
「お前ら服破くなよ」
「破かねぇぞ!!」
「失敬だなお前っ」
あいつらはおれからたくさんの服を奪い取るようにして洗いはじめた。がしゅがしゅがしゅがしゅ泡が出てきて。シャボン玉みてぇに汚れと一緒に空に飛びはじめる。
「泡いっぱいだぁ」
「いっぱいだぁ」
嬉しそうにしながら泡一杯の洗濯物をおれに渡す。
「サンジ、頑張るからなっ」
「おやつ頼むぞっ」
「…仕方ねぇな」
ちゃんと頑張りはじめたから、おやつぬきを取り消してやるか。そう言ったらあいつらはよりいっそう張り切って、泡を立てはじめる。
あいつらの手元から、たくさんのシャボン玉が空に浮かんではじけていった。
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泡。アンケより。ご協力ありがとうございました。