兄さん誕生日その3

□言いかけた言葉
1ページ/1ページ



「あんた、なんで…」


「うわぁぁぁぁん、母ちゃんんんん!!!」


一味の山の中から這い出した男は、何か袋を掴んだままマカルに駆け寄り涙ぐみながら抱き着いた。マカルは唖然としたままそれを受け止める。


「母ちゃんごめんよおおお!!!!この人達とは別の海賊にづがまっちゃっでぇぇぇ」


「え…」


マカルの顔がさっと青ざめたが、男は泣き喚いたまま、続きを話す。


「島についたら植物達に助けて貰おうと思って、でも、海の上で子電伝虫かけたのばれて気絶させられちゃっで」


「私にかけた時だね。なんでそんな無茶を…殺されてもおかしくないだろう」


マカルが困惑したように尋ねれば、男はぐすっと涙を啜り上げて、


「だって…電話かけなきゃ、今回は切られちゃったけど、電話かけなきゃ…母ちゃんにおめでとう…言えないじゃないか…!!」


「………!」


マカルは息を呑んだ。男は涙を拭いながら、必死で言葉を紡ぐ。


「母ちゃんの誕生日におめでとう…言えないなんて…!おれ…死んだ父ちゃんの分まで…母ちゃんの誕生日に…おめでとう言うって…決めてたんだ…!だから…!」


男は、バックを取り出した。中には少し冷めたローストビーフやマッシュポテト等、様々なごちそうが入っていて。男はそれを、ぐいっとマカルに突き出した。


「母ちゃん…!!誕生日…おめでとう…!!父ちゃんの分まで…おめでとう…!!」


涙で濡れた顔をあげ、マカルをまっすぐ見つめながら、男は何度も何度もおめでとうを繰り返す。ついにマカルの瞳に、じんわりと涙が浮かんだ


「…馬鹿だね」


マカルは腕を広げ、ぎゅっと息子を抱きしめた。贈り物ごと、おめでとうの言葉ごと、抱きしめた。


「…ありがとう…!」


――――
言いかけた言葉


Next→仲直り
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ