兄さん誕生日その3
□言いかけた言葉
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「あんた、なんで…」
「うわぁぁぁぁん、母ちゃんんんん!!!」
一味の山の中から這い出した男は、何か袋を掴んだままマカルに駆け寄り涙ぐみながら抱き着いた。マカルは唖然としたままそれを受け止める。
「母ちゃんごめんよおおお!!!!この人達とは別の海賊にづがまっちゃっでぇぇぇ」
「え…」
マカルの顔がさっと青ざめたが、男は泣き喚いたまま、続きを話す。
「島についたら植物達に助けて貰おうと思って、でも、海の上で子電伝虫かけたのばれて気絶させられちゃっで」
「私にかけた時だね。なんでそんな無茶を…殺されてもおかしくないだろう」
マカルが困惑したように尋ねれば、男はぐすっと涙を啜り上げて、
「だって…電話かけなきゃ、今回は切られちゃったけど、電話かけなきゃ…母ちゃんにおめでとう…言えないじゃないか…!!」
「………!」
マカルは息を呑んだ。男は涙を拭いながら、必死で言葉を紡ぐ。
「母ちゃんの誕生日におめでとう…言えないなんて…!おれ…死んだ父ちゃんの分まで…母ちゃんの誕生日に…おめでとう言うって…決めてたんだ…!だから…!」
男は、バックを取り出した。中には少し冷めたローストビーフやマッシュポテト等、様々なごちそうが入っていて。男はそれを、ぐいっとマカルに突き出した。
「母ちゃん…!!誕生日…おめでとう…!!父ちゃんの分まで…おめでとう…!!」
涙で濡れた顔をあげ、マカルをまっすぐ見つめながら、男は何度も何度もおめでとうを繰り返す。ついにマカルの瞳に、じんわりと涙が浮かんだ
「…馬鹿だね」
マカルは腕を広げ、ぎゅっと息子を抱きしめた。贈り物ごと、おめでとうの言葉ごと、抱きしめた。
「…ありがとう…!」
――――
言いかけた言葉
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