short novel

□アマリリス
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あるところに、
それはそれは美しい

神の落とし子がいましたとさ。


「ちょっとまて、なにそのタツノオトシゴみたいな言い方」

「元々タツノオトシゴも龍に似てるって意味でそうなったんだろぃ?
 そう変わりはねぇと思うけど、幸村君」

「気にしたら終わりッスよ、ここは何でもありなんスから」

「何で赤也やブン他のほうが俺より物事を知ってるんだろうね?むかつくなぁ」

「ちょ、幸村君それ八つ当たりだろぃ!!」

「幸村ぶちょ、タンマ・・・ぎゃああぁぁぁぁぁ!!!


「何をやっている、幸村」

「あまり赤也やブン太を苛めてやるな、精市」

「あ、真田に柳」

「真田、まじで助けてくれ!!」

「やなぎせんぱぁぁぁいっ!!!」

「ふふっ、大人しくしてな?」

やめろ精市。それ以上やると死にかねないぞ」


神の落とし子は、精市という名を付けられ
それはそれは大事に育てられました


・・・劇、始まったぜよ

「始まりましたね」

「って言うか、これ元々桃太郎のはずだろ・・・?
 何でこんな事になってんだ?」

「知らん、けどアドリブでやるしかなさそうじゃの」

「昨日のリハーサルまではこんなことはなかったのですが・・・」


精市はすくすく育っていきました。


「幸村、おまん劇始めるぜよ(小声)」

「え、なんだって?聞こえないな」

幸村!!ええかげんにせぇ!!」

「幸村、戻るぞ。他も、早く配置に着け!」

「は、はいッス!!」

「了解だぜぃ!!」

「承知した」

「俺が悪いわけじゃないよね、真田?」

「お前のせいに決まって・・・」

俺が悪いわけじゃないよね?

「・・・そ、そうだな。それよりも早く配置についてくれ、幸村」

「ふふっ、了解☆」


精市は育っていく中で、クマと相撲をしたり
狼に食べられたこともありました


「「「はぁ!?!?」」」

「ちょ、ありえんじゃろ!?」

金太郎赤ずきんが混ざってます!!」

「俺そんなセット造ってないぜぃ!?」

「そもそも俺そんな事したくない!!」

「落ち付け、まだ幕は開いていない
 鬼退治に行くシーンから幕を開ける」

「この流れで無事鬼退治にたどり着けるのか不安で仕方ないのだが・・・」


・・・ですが、神の子故の強運で何とか助かりました

「「「(ほっ・・・)」」」

「良かった、俺狼の腹の中で死ななくて・・・」

「ここで桃太郎終わりかと思ったぜぃ・・・」

「ッス・・・」


ずいぶん大きくなった精市は、ある日こう思うようになりました

・・・この世界が俺だけの物になったらどんなに良いだろう?


「あ、それいいかも」

「「「おいおいおい!?!?」」」

「やめてくれぃ、幸村君!!」

「幸村ぶちょーが言うと本当になりそうで怖いッス!!」


そこで精市は、こう考えました
鬼がいなくなれば、この世で恐れるものはなくなるんじゃないか?

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「赤也、ブン太。なに黙ってるんだい?」

「「(絶対鬼より恐れる存在だこの人・・・!!)」」
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