君と私と忘れた音
□それはそれは
1ページ/4ページ
あの事件からずいぶん月日は経った
あれから不思議と真田君にあっても別段落ちついていられたし、
まあそこそこ話すぐらいで、大した変化はなかった
ちなみに真田君からもらったネックレスはちゃんと学校側に許可をもらって毎日学校につけてきている。
この月日の間に真田君たちは見事高校総体で優勝を果たしたし、
私も勇気を出してちょっと大きめのコンクールに出て、見事金賞をもらったりもした。
全国大会に出ないかっていわれてもちろん断ったけど。
そんな夏が過ぎて、秋になった。
少しずつ木々が様々な色に染まっていく
「・・・・・・」
そんな外を呆然と眺めていた時だった。
「・・・?」
ふと見た旧校舎に、何かがいた
真っ白い、何か。
それが廊下を歩いて、突き当りの教室に入っていくのが見えた
・・・なに、あれ。
もしかして・・・おばけ?
・・・そんなわけ、ないよね・・・あはは
その後、どこかからピアノの音が聞こえてきた
さっきのお化けが、とも考えたけど、どっちかって言うとお母さんみたいな、正しく言えばピアニストの音だった。
お化けはこんな音出せないし、きっと音楽の授業で誰かがピアノを弾いているのかな、と思っていた
「白いお化け?」
屋上で渉とお弁当を食べている時に、ばったりいつもの3人と出会った。
そういえば最近知ったけど、この三人をまとめて三強って呼ぶんだって。
って渉にいったら今更?って呆れられたけど。
・・・で、たまたまその話をしたらあっさりお化けの正体が分かってしまった。
「多分それひまわりだろうね」
「?」
意味が分からなくて首をかしげると、今度は幸村君と同じクラスの柳君が説明してくれた
「あれはお化けではなく間違いなく人だ
日向葵(ひゅうがあおい)といって、この夏休み明けに立海に編入してきた女子だ」
「そうそう、名字を入れ替えると向日葵になるから、通称ひまわりなんだ」
でもなんでその子が授業中に真っ白になって旧校舎にいるんだろう?
そんな事を考えていると、考えがばれたのか柳君が説明してくれた
「日向は基本的に白いローブを常にかぶっているんだ、それで真っ白なお化けに見えたんだろうな
旧校舎にいたのは、彼女がいつも授業に出ずに旧校舎の音楽室で遊んでいるからだ」
『音楽室って事は、今日の3時間目に聞こえた音もそれですか?』
そう聞くと、幸村君がちょっと唸って、思い出したように手を叩いた
「そういえば今日はピアノ弾いてたね」
「・・・そうか、精市は席が窓際だったな」
俺は廊下側で聞こえなかった、と柳君が残念そうにしていた。
「あ、ついでに言わせてもらうとひまわりは俺の幼なじみだから」
『・・・まじですか』
幸村君が天使のような微笑で「ひまわりをよろしく頼むよ」と言ったので思わず私はうなずく事しか出来なかった
あれ、私仲良くなろうとしてるなんて言ったっけ。