君と私と忘れた音

□君の笑顔を
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・・・な、何でここに!?

焦っている間に真田君はどんどんこっちに歩いてくる
え、ちょ、ま、無理!!

今私が吹いてたの見てたってことでしょ!?
恥ずかしすぎて死ぬ!

「高橋は、吹奏楽部だったか・・・?」
「(違う・・・)」

私は首を振りつつ真田君から逃げようと少しずつ下がる
恥ずかしいよ、演奏聞かれるとか。

って言うか、テニス部ってこんなに終わるの早いわけ?
それで全国いけるって、すごくない?

「帰宅部か?」
「・・・」

今度は首を縦に振る
その間も常に少しずつ距離をとる

「・・・何故逃げる」
「っ!?」

ばれた!?
いや、そりゃいつかはばれるかもしれないけどさ!

とにかくこのままじゃまずいと思い、ケータイを取り出そうとポケットに手を入れる

「・・・?」

無い。
ケータイが、ない。

「(あれ・・・?)」

確かポケットに入れたままだった気がするけど・・・
上着のポケットも、スカートのポケットにも入っていない

どこにやったか思い出すために、記憶をキュルキュルキュル、と巻き戻す

「・・・どうしたのだ?」

「・・・!!」

そうだ!!
ベンチの上のカバンと一緒に入れてた!
私は一時真田君の声を無視してベンチに駆けていった
瞬間、

「なぜ逃げる!?」
「っ!?」

真田くんに手を捕まれて引き戻された。

・・・え、はい?
ちょーっと待って、なんで!?

「またなにかしたのなら謝る、だから逃げないでくれ」
「・・・?」

私がよく意味が分からなくて首をかしげると、つられてか真田君も首をかしげた

・・・あ
真田君の言葉無視したまんま走り出したからかな・・・

「(誤解してもおかしくない・・・か)」

でも、こんなに焦った真田君始めて見たな
・・・ちょっと、かわいいかも。

とにかく今は真田君の誤解を解くために、近くに落ちていた棒を拾った
そのまましゃがみこんで地面に文字を書いていく

とりあえずケータイ≠ニ書いてベンチにおいてあるカバンを指差す

「・・・な、すまぬ!」

ようやく分かってくれたみたいで、焦ってまた謝った
私は首を振って笑った
私がいつも使う、気にしていない事を伝えるサイン。

とりあえずケータイを取りに行ってもう一度真田君の所に戻る

ケータイを開いた瞬間、まず驚いた。
時刻は7時。
普通に部活をしていても30分前には家に帰れる時間だ
・・・ってことは、あれだ

テニス部って一体何時まで部活してんの!?
じゃなくて、人が帰ってるの気付かないで今まで吹いてたの!?

・・・ヤバイ、ほんとに死ねる。

「・・・どうしたのだ?」

そういわれて慌てて首を振る

『時間に驚いただけで、もう7時でびっくりしました』
「・・・お前はずっとここにいたのか?」

『はい』

そう書くと、真田くんはちょっと微妙な顔をした
なにか私変なこと書いたんだろうか?

「女子がこんな時間まで一人でいたら危ないだろう」
「・・・・・・」

そうですね。
うん、わかってるけど今日はなぜか時間を忘れていたんだよ。

びっくりだよねー(棒読み

・・・そんな事考えていても、真田くんの視線は私から離れない
何がしたいんだろうこの人。

意を決して聞こうとした時

「・・・もう一度、聴かせてくれないか?」

「(・・・へ?)」

その一言で、一瞬アホ面になってしまった。
慌てて思考を戻して指を動かす

『私のなんか聞いてもいいことないですよ』
「だが、先程から聴いていてとても綺麗な音色だった」

・・・そんな、真っ直ぐな目で見られても(汗

人の前で吹くの、恥ずかしいんだよなぁ・・・
けど、面と向かってお願いされたら、なんて断ったらいいのか分からない
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