めいん
□愛せない
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静まり返ったロッカールーム
そこにあるのはたったの4つだけ
1つは
大量の赤い液体
2つは
赤く染まったナイフ
3つは
赤く染まった人
4つは
赤く染まったオレ
あっ
赤く染まったロッカーもあった
じゃあ5つかな
[ハッ...ハハハッ...]
この状況で笑いしか込み上げてこない
[ハハハハハハッ...]
オレは自分についてしまった血が面白かった
あっ
赤い液体っていうのはもちろん血のこと
今日は決勝戦の日
オレたちイナズマジャパンは試合するためにこのスタジアムに来た
みんなはすごくはりきっていた
だってこれに勝てば世界一なんだから
もちろんオレもはりきっていた
ポケットにナイフいれて
[ちょっといいですか]
オレは試合前にオレンジのバンダナが特徴の先輩に声かけた
[んっ,何だ]
先輩はいつもの笑顔でオレに返答した
その笑顔にドキッとしてしまうのはいつものこと
[ちょっとロッカールームに来てくれませんか]
先輩はちょっとびっくりした顔だった
でもすぐ笑顔で答えた
[おおっ,いいぜっ]
先輩が断らないことなんてはじめから分かってた
ロッカールームに先輩連れ込んだ後,オレは鍵かけた
もちろん先輩は気づいていない
[どうしたんだ,こんなところに呼び出して]
先輩は笑顔で聞いてくる
その笑顔がオレは好きだ
そして
そんな笑顔ができる先輩も好きだ
[円堂さん...]
オレはポケットからナイフだした
あっ
オレンジのバンダナが特徴の先輩ってのはもちろん円堂さんのこと
気づけば周りにあるのはたったの4つだけ
1つは
大量の赤い液体
2つは
赤く染まったナイフ
3つは
赤く染まった人
4つは
赤く染まったオレ
あっ
赤く染まったロッカーもあった
じゃあ5つかな
オレがナイフ向けたときの円堂さんのおびえる顔がオレの頭によぎる
かわいすぎですよ
円堂さん
オレはあなたが大好きなんです
世界で一番愛してるんです
でも
オレの気持ちは報われない
だってあなたの好きな人が誰だか知っているから
オレはいつもあなたに見とれていたんです
だからあなたの好きな人なんてすぐに分かっちゃうんです
ごめんなさい
ごめんなさい
ごめんなさい円堂さん
オレはあなたが大好きなんです
好きすぎてヤバいんです
いつもあなたのことしか考えてないんです
オレはこんなにもあなたが好きなのに
あなたの好きな人はオレじゃない
つらいんです
つらすぎるんです
あなたが好きすぎて
つらすぎるんです
だったらいっそ楽になりたい
円堂さんと一緒に
大好きなあなたと一緒に---
[円堂さん]
オレは赤く染まって倒れている円堂さんに触った
[愛してるんです]
オレは円堂さんの唇に自分の唇のせた
[ハッ...ハハハッ]
笑いしか込み上げてこない
[ハハハハハハハハハッ]
解放された気分だ
もうこれでつらいことなんてない
オレはずっと円堂さんと一緒だ---
血にまみれたナイフに手のばした
[大丈夫です]
そのナイフ自分の胸に向ける
[オレもすぐそちらに逝きますから]
あれっ
自分の頬に涙が流れている
どうして
今から円堂さんとずっと一緒にいられるっていうのに
どうして---
[ごめんなさい]
オレは最期にあやまった
ごめんなさい
ごめんなさい円堂さん
オレはあなたが大好きだったんです
愛していたんです
あなたと一緒に居たかったんです
愛しすぎてしまったんです
オレは愛し方なんて知らない
知らないんです
だって
愛したことなんてなかったから
あなたは
オレが初めて愛せた人なんです
愛すってどういうことなんですか
オレはあなたのこと
愛したかっただけなんです
ごめんなさい
ごめんなさい円堂さん
あなたの世界一になるという夢うばってしまって
だってあなたはもう戦えないんですから
オレが殺してしまったんですから
静まり返ったロッカールームにあるのはたったの4つだけ
1つは
大量の赤い液体
2つは
赤く染まったナイフ
3つは
赤く染まった人
4つは
赤く染まったオレ
あっ
赤く染まったロッカーもあった
じゃあ5つかな
愛せない