Dream

□籠の中の少女
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エイリア学園・地下牢



「名前?」


愛する彼女の名を呼ぶ。

両手両足に鎖を付けられ、首を首輪をした状態で、
彼女は此方を見てくる。

彼女は苗字名前。

父さんに逆らおうとして、
地下牢に閉じ込められている。

「起きてる?」

『当たり前だ』

「おはよう」

そう言って微笑む。

身を捩りながら、オレのもとへ来る。


『朝食』

「ははっ、わかってるよ。
食いしん坊だね」

『うるさい馬鹿。
さっさと食べさせろ』

「わかってるって」


そう言って、
持ってきた朝食を名前の口へと運ぶ。


「美味しい?」

『まあ、美味い』

「良かった。
それ、オレが名前のために作ったんだ」

『そうなのか?』

「ああ。
美味しいって言ってくれて、嬉しいよ」

『そうか。
……ヒロト、もっと頂戴』

「ふふっ、
ほんと食いしん坊だよね」

『うるさいっ』


そして、
名前が朝食を食べ終えた時、
オレは名前に言った。


「ねえ、名前」

『ん?なんだ?』

「あのさ、父さんからなんだけど」


そう言った瞬間、
名前の表情が歪んだ。

彼女はサッカーが上手かった。
その実力は、エイリア学園内でも上の方。
マスターランクほどの力がある。

しかし、彼女はその力をエイリア学園のために使わず、
父さんを止めるために使おうとした。

自分の計画の邪魔になると思った父さんは、
名前を地下牢に閉じ込めた。

その時、
ひどく扱われたらしくて。

その所為で、名前は父さんを怖がるようになってしまった。
名前を聞くだけで、怯えるまでに。

その父さんからだった。

今度はなにをされる。

そんな気持ちが、彼女の中にあるんだろう。

ガタガタと震える名前を見つめながら、ゆっくり話す。


「父さんからの伝言。


名前は、この地下牢から出ていいって」



『……………え?』

「名前はもう、此処から出られるんだよ」

『だって、』


ガチャッ


牢の鍵を開ける。

名前に近づき、手足と首の鎖を外す。


「おいで」


そう言うと、よろめきながらもオレのもとへ来る。

ふらつく体を、そっと抱き抱える。


「大丈夫?」

『ああ…。
でも、どうして……?』

「名前にひどいことしたから、そのお詫びに牢からは出すって」


そう言うと、
目に涙を溜める名前。

そんなに嬉しかったのか。


「でも、誰かの部屋で見張っておくよ?
逃げられたら困るからね」

『そうか。
でも、誰かって?』

「名前の好きにしていいよ」

『私の、好きに……』

「ああ。どうする?」


そう言うと名前は俯いた。

そして小さく口を開いた。


『………じゃあ、ヒロト』

「なに?」

『私を、ヒロトのところに居させて下さい』

「勿論、いいよ」


ギュッと、オレに抱きついてくる名前。

背中に手を回し、強く抱き締める。






籠の中の少女








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