夏戦争
□2人の平穏
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「コレハ、ナンダ?」
ラブマシーンが指したのはふよふよと浮かぶ一つの箱。
そこにはアダルト注意と書かれていた。
「このコンテンツはアダルトサイトです、貴方は未成年ですから見てはいけません」
「オレ、ミセイネンナノカ?」
「貴方は産まれて数ヶ月なんです、まだまだ子どもです」
ソラが箱をツンとつつくと、恐ろしいスピードで箱はどこかに飛んでいった。
「アーア・・・」
「あと20年は見させません」
「ソラ、ナニカオシエテ」
ラブマシーンは純粋無垢な瞳でソラを見た。
ソラはそんな様子のラブマシーンににっこり笑顔を向けた。
その笑顔はまるで、親が子に向けるような優しいものだった。
「では、“家族”の話をしましょう」
「カゾク?」
「ええ、自分にとって心地よい居場所で、なおかつ強い絆で結ばれている・・・今、貴方を倒そうとしているのも“家族”ですよ」
「オレ、“カゾク”ニ、タオサレル?」
「貴方は・・・少し暴れすぎてしまったのです」
大丈夫、とソラはラブマシーンの頭を撫でた。
「私が護ってあげます」
「ソラ、」
「なんです?」
「ソラトオレモ、カゾク?」
ラブマシーンは自分を指差して首をかしげた。
「ええ、もちろんです」
ラブマシーンは目を細めてソラを抱きしめた。
「カゾク!カゾク!」
ソラがラブマシーンと出会った時、すでにラブマシーンは日本中を荒し回っていた。
しかし、ソラがラブマシーンを説得したおかげで情報の混乱はたった数時間で収まった。
それでもOZ内の混乱は酷く、ソラが元に戻すのに半日ほど時間を要した。
栄が心臓発作になることを知っているソラは事前に匿名で侘助にメールを送った。
メールを受け取った侘助は一度長刀を向けられていたにもかかわらず、すぐさま屋敷へと引き返した。
そして「ばあちゃんに良くないことが起こる」と栄の傍を離なかった。
結果、栄は一命を取り留め、侘助も陣内家の一員として快く受け入れられる事となった。
侘助は匿名でメールを送ってきた相手を突き止める為に、陣内家で逆探知に勤しんでいた。
ラブマシーンには処分命令が下っており、今や賞金が懸けられていた。
ソラはラブマシーンと共に追っ手から逃げ続けていた。
ラブマシーンは侘助によって解体作業が済まされており、姿こそ屈強なままだが、防御力、攻撃力ともにゼロに等しかった。
ソラはそんなラブマシーンをひたすら護り続けている。
「さて、そろそろおやつにしましょう」
「オヤツ!キョウ、オヤツナニ?」
「今日はホットケーキですよ」
あのラブマシーンがまさかこんなに穏やかな日々を過ごしているとは、誰も知らなかった。
もぐもぐとホットケーキをほおばるラブマシーンを見ながらソラは今日は何を教えようかと考えていた。
2人の平穏
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