□梅雨恋線
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「ふぅん…。…千鶴ちゃん、この雨の中を走って帰るんだ。君って、結構野性的だよね、おしとやかそうな顔してるのに。」

「沖田先輩には関係ありません。どんなことを言われても、私は帰ります。」

とうとう完全に怒ってしまったらしい千鶴はぶっきらぼうに言い、失礼します。と少し礼をして雨の中を歩き出した。見かねた沖田は自分の傘を広げ、千鶴の後を追って隣を歩き傘を寄せた。何ですか。と不機嫌丸出しで千鶴は沖田を見上げた。

「ごめんごめん。そんなに怒らないでよ、少しからかい過ぎちゃっただけなんだから。ねぇ、このまま一緒に帰ろうよ。」

端からはただのナンパにしか見えない。

「分かりました!一緒に帰りますから、着いてこないでください。」

業を煮やしたように千鶴が言うと沖田が笑った。着いていかずに一緒に帰るなんて無理だよ、と。自分が無茶苦茶なことを言ったと分かると、忽ち顔が真っ赤になった。

「じゃあ、一緒に帰ろうか。」

そう微笑み、改めて傘と自分の体を千鶴に寄せ、歩幅を合わせて二人は歩き出した。
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