□梅雨恋線
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「……はぁ…。」

千鶴は下駄箱で一人、どんよりとした空を眺め小さく溜め息をついた。溜め息の理由は、昼頃から降り始めたこの雨だ。夜近くになったにも関わらず止む気配はなく降り続けている。

(天気予報…ちゃんと信じておけば良かったな…。)

ここ数日外れっぱなしの予報を、今日も当たらないだろうと千鶴は過信してしまった。それが間違いだったのだ。

(全然止みそうにない…。走って帰ろうかな、濡れちゃうけど…。)

そう決心し、千鶴は足を踏み出そうとした矢先…。

「千鶴ちゃん、こんな所で何してるのかな。子供は帰ってる時間だよ。」

「あ、沖田先輩…。私はもう子供じゃありません。一つしか違わないのに…。」

後ろから一個上の沖田が声をかけてきた。全く心配そうではなく、不思議そうでもなく、ただからかいに来ただけのようだ。

「私だって帰りたいのは山々なんですが、今日傘を忘れてしまって…。」

「ふぅん…それで雨宿りしてたんだ。それとも誰かが通りかかるのを待って、傘に入れてもらおうと思ったのかな。」

沖田にクスリと笑われそう言われ、冗談と分かっているのに千鶴は先ほどよりむくれた。

「そんなつもりじゃありません。今帰ろうと思ってたところだったんです。」
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