頂き物

□家出の理由〜フラウの浮気
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「フラウなんか…嫌いだ」

フラウの目の前に拳を握りしめて立ったテイトの目には涙が滲む

「ちょっと待て!!またお前は何か勘違いしてねーか!!?」

慌てふためくフラウの背後では不安そうに女性が肩をすくめている

「ジェシカちゃんだけだと思ってたのに…」

テイトはグスッと鼻をならした

「はあっ?」

「やっぱりフラウは綺麗な女の人の方が好きなんだ」

悔しそうにテイトは唇を噛みしめ、フラウを涙目で哀しげに睨みつけた

フラウの姿がなく、心配して探していた矢先の出来事だった

「なんでそうなんだよ」

フラウが我慢できずにテイトを引き寄せようと腕をのばすが

「さ//触るな!!浮気者」

テイトはその手を力任せにひっぱたいた

「浮気!?」

その発言にフラウは思わず目を見開いて驚いた

「うるさい!!とにかく嫌い!!きらいきらいきらいきらい大嫌いだばかー!!」

テイトはフラウに向かってそう叫ぶと、逃げるようにその場から走り去っていく

「あっ!おいテイト!! あのバカ… あぁ…わりぃー 気にすんなこっちこそ悪かったな…」

今すぐにでもテイトを追いかけて抱きしめたい…しかし、フラウは背後で不安そうにしていた女性に微笑みかけるだけでそうしなかった






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「フラウなんかきらいきらいきらいきらい…きらいきらいきらいきらい…」

フラウから逃げ出したテイトは、ぶつぶつと呟きながら歩いていた

「誰が嫌い?」

優しい声がテイトを引き止めた

「…ラブラドールさん」

「テイト君を泣かせるなんてひどいよねv」

目の前に現れたラブラドールは微笑みながらテイトを見つめた

「……」

「テイト君?」

「っ///ラブラドールさん…しばらく部屋に泊めて下さい」

テイトは思い切ってラブラドールにそう切り出した

ラブラドールの司教服の袖口をキュッと握りしめて俯くテイトに、ラブラドールは一瞬驚いたものの、すぐに優しく応えた

「…いいよvフラウには内緒だね」

「えっ//あっ…」

「テイト君が落ち込むのは決まってフラウが原因だもんねv もしフラウが来てもテイト君の気持ちが落ち着くまで追い返してあげるから安心してv」

しーっ…と指先を口元に当てながらラブラドールがウィンクした

「…ありがとうございます」

テイトは深々と頭を下げた




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「はい♪蜂蜜入りの紅茶だよv飲んで」

フワリと香る茶葉の匂いにテイトの気持ちがホッと落ち着く

「おいしい…」

「ビスケットも食べてね」

「あの…すみません」

ティーカップを両手で抱えたまま、テイトが小さな声で謝罪した

「えっ?」

「頭に血が上ってて…」

「仲直りできるといいね」

ラブラドールが優しく微笑み、テイトの隣へ腰掛けた

「………」

「あっ…」

ラブラドールが部屋の入り口に目をやる

「えっ」

「ふふっ…大慌てしてるみたいだね…フラウ」

ラブラドールはクスクスと笑い立ち上がった

「えっ…フラウ?」

テイトがフラウの名に驚いた表情を浮かべた

その直後の事だ

ドンドンドン!

激しくラブラドールの部屋のドアが叩かれた

「おい!ラブ!」

フラウの必死な声が響く

「ねっ」

ラブラドールがテイトに笑いかけ、ドアへと歩いていく

「…」

「だいじょうぶv僕に任せて」

気持ちの整理がついていないテイトに対し、入口から見えない奥へ行くよう促してからラブラドールはドアを開けにいった

「フラウうるさいよ?」

「おい!テイト知らねーか!?」

ドアを開けた途端、必死の形相のフラウが身体を室内へとねじ込んできた

「テイト君の事ならフラウが一番よく知ってるじゃない」

「いや・・その」

ラブラドールからの指摘にフラウは口ごもってしまう

「テイト君がどうしたの?」

「…いなくなった」

フラウはばつが悪そうに理由をつげた

「なにしたの」

ラブラドールがじーっとフラウをにらむ

「な…なんもしてねーよ」

フラウは益々ばつが悪そうにしている

「じゃあテイト君がいなくなるわけないじゃない」

「それは…」

「なにしたの?」

「魂の救済の現場を見られた」

フラウが告げた内容にラブラドールが首を傾げた

「いつものフラウの仕事…?」

「今回は相手が女だったんだよ」

「それだけで?」

「……」

「フラウ?」

「未練を断ち切るために恋人のふりをしてたんだ…それをテイトに見られたんだ」

「あぁ…」

なるほど…と、ラブラドールが心の中で頷いた

「テイトが気にすると思って内容は黙ってたんだが…」

「運悪く一番駄目なタイミングで見られたんだね」

「…おう」

「残念ながらテイト君はすごく傷ついてるみたいだよ」

ラブラドールがフラウに告げた

「なっ!いるのか!?」

「いないよ…ただ…すごく傷ついているのは感じる」

「っ…」

ラブラドールの言葉に、フラウが拳を握りしめた

「どうするつもり?」

「探すに決まってんだろ」

「そのあとは?」

「わからねー…とにかく…今はあいつを探すしかない…変な事に巻き込まれたりしてなきゃいいんだが…テイト見つけたら捕まえといてくれよ!

じゃあな」

フラウはそう言うと、テイトを探すために走り去っていく



「だってv」

室内へと戻ったラブラドールはテイトに寄り添う

「………」

「仕事だったみたいだね」

「でも……」

「一応フラウの援護をしとくとしたら、フラウはテイト君を裏切る事はしないよ…お花さん達もそう言ってる」

ラブラドールが微笑む

「……」

「でも…今回のことはフラウが酷いよねv」

「フラウに酷い事した……でも…でも…嫌だったんです」

テイトがキュッと唇を噛みしめた

「テイト君は本当にフラウの事が好きなんだねvふふふ…妬いちゃうなv」

「そ…それは//」

「とにかく…今日はフラウも頭冷やさせて…テイト君もゆっくりしていってねv」





夜…

「…フラウ」

「寝言?……ふふっvテイト君たら…しかたないなぁv」

ラブラドールに借りた毛布に顔を寄せながら、テイトがフラウの名を呼んだ…
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