短編

□夏の花
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8月。
夏真っ只中です!
そして、8月と言えば・・・!

「花火大会?」
「そう!今晩、隣町で花火大会があるんだってさ。せっかくだから行こうぜ!!」

梓がいきなり白の家に押しかけてきてこれまたいきなりそう言いだす。
梓が突然なのはいつもの事だが、今日はまた一段と酷かった。

「今夜って・・・あと二時間もしたら夜じゃん。いきなりにも程があるよ」
「それは分かってるけどさ。隼人がさっき言ってたから慌てて来たんだよ」
「隼人が?」

隼人の名前を聞いて反応する白に、梓は少し苦笑しながら頷く。

「そう。何でも、翔にぃが行くから行くって言ってた」
「珍しいね。隼人が祭りに行くなんて」
「あ、あの・・・白さん?」

白の雰囲気が少し怖くなったことに気付いて、梓が声をかける。

「なに?」
「えーと・・・何か怒ってませんか・・・?」
「気のせいだろ?」
「あの・・・?」
「気のせいだよね??」
「はいっ・・・!」

滅多に見せない笑顔で梓を黙らせた白は、心の中で少し拗ねていた。

(確かに・・・隼人は友達も大切にしてるけどさ・・・。何で俺には言ってくれなかったんだろ・・・)

少しの寂しさについ心の中で文句を言ってしまう。
そして、不満があるという事が表情からはっきり見てとれるので、梓は失敗したと思っていた。

(やべ…白のやつ、怒ってる…。しかもあれ、翔にぃに嫉妬してるし)

面倒な事になったなぁ…と思いながらも、何とかしなければ後が大変になる。

「な、なぁ、白。俺今日その花火大会に行くつもりなんだけどさ、一緒に行かね―?」

白の機嫌を直そうと必死で誘う。

「嫌だ。行かない。俺人混み好きじゃないし」
「拗ねるなよ・・・」
「拗ねてない」

徹底的に嫌だと言い張る白に梓は呆れてしまう。
たしかに白は人混みが苦手だし、あまり祭りには興味がないことも事実だ。
しかし、隼人が行っているのに行かないというのはよっぽどの事なのだろう。

「俺一人で行っても意味ないし、隼人と会えたら一緒に回れるじゃん。いいだろ?」
「…翔先輩にだって迷惑だろ」
「翔にぃなら喜ぶと思うけど」

面倒見の良い翔が自分達を邪険に扱う事はまず無い。

「行こうぜ、白」
「・・・分かったよ」

梓が目を輝かせながら言ってくるので、白は仕方なく了承した。
そして、夕方6時に祭りに行くことになり、梓は一度家に帰って行った。
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