長編
□闇の狭間\
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「・・・」
レインがイヴレ帝国に来てから一週間後、レインはメタルに話した時の事を思い出していた。
『じゃあ、コロナ国王がそう言ったんですね?』
『あぁ』
『貴方ならそんな戯言を聞き流すことくらいは出来るはずですが?』
『・・・心当たりがなければ俺だって信じなかった』
『・・・心当たりがあるという事ですか?』
『・・・母上が亡くなった時に父上の口から確かに「お前のせいで」という言葉を聞いた』
『気の迷いだと思いますが』
『どうだろうな』
『・・・とにかく、真実がどうであれ今は動かない方が賢明ですよ。動けないでしょうが』
『・・・』
『今はまだ熱があるのですから大人しくしていてくださいね。この城にも書庫はありますから好きなように使ってください』
あの時の内容を思い出すと同時に、これからどうしようかと迷っていると外の様子が急に騒がしくなった。
(なんだ・・・?)
レインがいる部屋は城下を一望できるところにあり、城の正面入り口もはっきり見える。
窓から外の様子を見てみると、そこにはゼクスがいた。
「・・・コロナ国王が何かし始めたか」
よく考えてみるとレインは一応追われている身だ。
追う側のコロナ国王はどんな方法で来るかは大体分かる。
その一つがレインの父親に連絡し、探させる方法だ。
その中にはゼクスも含まれるだろう。
「・・・まずいな・・・」
ゼクスに知られれば、コロナ国王にも情報が渡る。
それだけは避けたかった。
「・・・もう限界だな」
未だに動いて良い状態ではないが、レインは銃を持って部屋を静かに出て行った。
「メタル様、王子がこちらにいらっしゃるのではありませんか?」
ゼクスはメタルの姿を見て早々に追及する。
クロード国王に頼まれてから一週間。
出来る限りの速さでレインを探していたが、結局一週間も掛かってしまった。
「レイン君はまだ検査じゃないんですか?私の方にはそう伝えられていますが」
「メタル様、正直に答えてください。王子がこちらにいるという事は分かっているんです。王子はご無事なのですか」
メタルのとぼけた様子にゼクスは微かな苛立ちを感じるが、相手は一国の王。下手に話す事は出来ない。
ゼクスの焦り様を見てメタルはため息を吐く。
「君は何も知らないんですね」
「?何をですか」
一瞬にして真剣な顔になったメタルに戸惑いつつも言葉が気になったのか、ゼクスは聞き返した。
「まぁ、君にならレイン君も怒らないでしょう」
「?」
そうつぶやいたメタルはゼクスにある程度の所まで話すことにした。
もちろん、クロード国王の内容に関しては補足をつけて。
「兄さん大変!レインが居なくなっちゃった!!」
「!よく探しましたか?」
「探したよ。もしかしたらゼクスが来たことに気付いて出て行ったのかも・・・」
全てを話し終えた頃にノイズがそう言いながら駆け寄ってくる。
ゼクスは二人の会話にすぐ反応し、自分が引き連れていた兵士たちに命じる。
「皆さんで王子を探してください。私も探します」
「御意!」
返事をした後に兵士たちは全員様々な方向へ散って行った。
ゼクスもレインを探すためにその場を去ろうとするがメタルに呼び止められた。
「ゼクス君」
「なんでしょう」
「レイン君はあなたが怖くて逃げたのではないと思いますよ。おそらく・・・」
「守るため。・・・あの方はそういう方ですから」
そう言い残し、ゼクスはその場を去った。