長編

□闇の狭間Z
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「・・・っ」

牢から逃げたレインは森の中を必死で走っていた。
城から抜け出した後、コロナ国王がレインの脱走に気付き、追っ手を送り出してきたのだ。
わざと森の中に入り、追っ手を撒いたが、またいつ見つかるか分からない。
城を抜け出してからすでに一日が経過しているが、一睡もせずに逃げていた。
酷いけがの状態に加え、体を一度も休めずに逃げ回ったせいで体中に激痛が走り、もう限界だったが、休む暇など本当にない。

そして、何とか森を抜け出し、視界が開けた瞬間、目に飛び込んできたのはレインがよく知る場所だった。

「ここ、は・・・」

――――イヴレ帝国――――

城の裏側に位置する場所に出てきたため、一瞬分からなかったが、見たことのある風景で何処なのか理解できた。
しかし、今のレインではノイズ達に会う事は出来ない。
体中傷だらけで会えば、すぐにレインの父親であるクロード国王にも連絡が行く。
そして、コロナ国王にも。
それだけは出来なかった。

「・・・何処かに行かないと・・・」

逃げるようにしてその場を去ろうとしたその時。

「誰だ!?」

突然声が聞こえ、その方向を見る。
そこにはイヴレの兵士だと思われる男がいた。

「誰だ?こんなところで何をしている!?」
「別に、何も・・・」

見つかったという事はいつノイズ達の所に連れて行かれるか分からない。
レインは急いで森に入ろうとするが、体がうまく動いてくれず、あっさりと腕を掴まれた。

「逃げるという事はメタル様やノイズ様の敵か?」
「違う・・・」
「なら何故逃げる!?」
「それは・・・!」

「どうしたの?」
「!!」

レインが必死で反論しようとしている所に聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「ノイズ様!」
兵士の口から出てきた名前に確信が広がる。
今、ノイズに会えば何があったのかと確実に問い詰められる。
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