短編・中編

□好き嫌いを無くしましょう
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「王子、いい加減にしてください!」
「嫌なものは嫌だと言っているだろう」

レインのヘやから、ゼクスに怒られながらも、レインが徹底的に反抗する声が聞こえてくる。

「何?どうしたのー?」
「・・・お前はいい加減に学習しろ」

大声が聞こえて気になったのか、相も変わらずノックをせずに入って来るノイズにレインは呆れ返っている。
しかし、そんな二人の会話をゼクスの声が遮った。

「王子、何が何でもしていただきますからね!」
「断固拒否する」
「レイン様!」
「今回に関してはそれは無効だ」

今回は絶対に聞かないというレインの頑なさに、ノイズは何があったのかとレインに聞いてきた。

「珍しいね、レインがここまで言うなんて。何かあったの?」
「別に大したことじゃない。ゼクスが俺にそれを食べさせようとするから拒否してるだけだ」
「それって・・・ケーキの事?」
「あぁ」

レインの使っている机の上には小さなケーキが置いてあった。
どうやら、ケーキを食べる、食べないで揉めているらしい。

「何でケーキ?レインって甘いもの嫌いだったでしょ?」

そう、レインは甘いものが大の苦手だ。
普段飲んでいるコーヒーも完全にブラックで、少しも砂糖は入れない。
そのことでゼクスがレインの体を気にしていることは知っているのだが・・・。

「最近王子の仕事が一気に増えたんです。今日漸く片付いたので疲れていらっしゃることを分かっていたんです」
「あ〜分かった!甘いもの食べたら疲れが取れるからケーキなんだ」
「そういう事です」

ケーキの理由が分かったノイズが大声を上げる。
ゼクスが肯定した隣で、レインはノイズの声の大きさに耳を塞いでいた。

「いちいち大声を出すな」
「はいはい。ごめんなさい!・・・それで?レインはケーキなんていらないって言ってるんだ」
「当り前だ」

本当に嫌そうな顔をするレインにノイズは呆れ返って肩をすくめている。
まぁ、レインが甘いもの好きだったらある意味で怖いが、一切甘いものを取らないという事は確かに心配な部分もあるだろう。

「そもそも何でレインは甘いものが嫌いなわけ?」
「・・・昔は少しくらいなら大丈夫だったんだが、母上が・・・」
「?」

溜息を一度吐いてから説明を始める。

「3歳くらいの時に他国のパーティーに連れて行かれたことがあったんだ。その時にケーキを母上に渡されて、食べたら」
「食べたら?」
「・・・思った以上に甘すぎて、一口で限界だったんだ。それを見た母上が、『もう少しだけで良いから食べなさい。食べないとお外で遊んだ時にすぐに疲れてしまいますよ』と半ば強引に食べさせてきて」
「・・・トラウマになったんだ・・・」

レインの言いたいことが分かり、ノイズが気の毒そうに呟く。
ゼクスも、初めて聞いたのか、顔が少し引き攣っていた。

「あれから数日間は母上の部屋に行かなかったな」
「ドンマイ・・・」

遠い目で空を見るレインにそう言うノイズだが、それだけではゼクスの言葉は変わらない。

「王妃様のおっしゃった通りですよ、王子。少しで良いですから食べてください。そこまで甘くはありませんし」
「嫌なものは絶対に嫌だ。例え甘さが控えめであっても甘い事に変わりはない。断る」
「王子!」

言い合いがまた始まり騒がしくなる。
ノイズはノイズで飽きたのか、部屋を出て行こうとした。

「まぁ、頑張ってね〜レイン。飽きたから私帰るね〜」

そう言って部屋を出て行った。
言い合っている二人が気づかない間に出て行ったので誰も止めることはなかった。



このレインとゼクスの言い合っていた日は結局レインはケーキを食べず、それ以降も口にすることはなかった。


*FIN*


無理矢理終わった感がぬぐえないこの小説・・・。

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